第62話 ギンVSツウサン③
たった一発の攻撃で俺の意識は失われかけようとしていた――。
「「ギンさん!」」
「ギン!」
はっ。俺は自分の名を呼ぶ声で意識を取り戻した。俺の名前を呼んだのはピーチェ、レイ、アイリスの俺と共に旅をしている3人だ。そうだ。俺がここで負けるわけにはいかないんだ。今、ピーチェとアイリスはツウサンによって囚われている。レイもここで俺が負けたら奴の手によって囚われるだろう。俺は、あの3人のためにも負けられない。ここで負けたら男じゃない。
「はああああああああああああ」
俺は叫んだ。壁にめり込んでいた俺は気合で立ち上がる。俺の体はさっきの攻撃でだいぶやられてしまった。しかし、今は気にしている場合ではないんだ。動け! 俺の体。動くんだ。俺は無理やり体を動かそうとするがその度に激しい痛みが全身に渡ってしまう。
「うっ」
「無理するな。お前の体はもう動かない。諦めろっ」
ツウサンは俺に向かって諦めることを求める。だが、俺はこの言葉でかえってやる気を出した。俺の体よ動くんだ。何としてでも体を動かしてあいつを、奴をブッ飛ばすんだ。
「はああああああああああ」
「「「ギーン!」」」
3人が俺の名前を呼ぶ。俺は力を振り絞って立ち上がる。消えかけていた意識もしっかりしている。これもすべてはあの3人のおかげだ。俺は応援してくれているピーチェ、レイ、アイリスの3人を見る。そして、一言だけ言う。
「待ってろ。すぐに終わらせる」
俺はそう言い終えると再びツウサンとロボットに対峙する。
「さぁ、いくぞ」
「ふん。おとなしく諦めてここで死ねばよいものを。いいだろう。今度こそ殺してやる」
俺とツウサンはお互いに言葉を交わしそして動き出した。
「炎色の風!」
先に動いたのは俺であった。俺は自分の得意な魔法である炎色の風を使用した。
炎色の風
風・炎属性 技ランク3
能力 炎が含まれた熱い風を発生させる。
炎色の風はロボットに向かって真っすぐに放たれていく。ロボットは鉄でできている。なので、炎は効くはずだ。ツウサンはロボットに何も指示を出さずにただ笑っているだけであった。なのでロボットは全く動いていない。あと、少しでロボットに当たる。俺はそう確信した時、
「プロテクト・モード」
ツウサンは叫んだ。それはロボットに対する指示であった。
ドッガーン
爆発音が発生した。それは、炎色の風とロボットがぶつかったことで発生した音だ。爆発によりあたりは煙で視界が悪くなった。俺とツウサン・ロボットとの距離はそこまでなかったがお互い向こうの様子は見えない。
「どうなった?」
俺は、向こうの様子がわからなくて口にした。少なくともロボットは壊れているはずだと確信をしていた。俺の自慢の炎色の風を受けた以上は持たないはずだ。
……
……
しばらくして煙により失われていた視界は回復してきた。
これで、ようやく向こうの様子を確認することができる。完全に視界が良くなろうとした時俺は驚愕した。
「なっ!」
「ふん。どうしたギン? 何かおかしなことがあったのか?」
俺が驚いていることをいいことにツウサンは不気味な笑みで話しかけてくる。それの声はとても満足そうに聞こえた。
対する、俺は何でだという疑いの気持ちで胸がいっぱいであった。
「何でだ! 何でロボットに傷一つついていない!」
俺は叫んでいた。確かに俺の攻撃はロボットに当たったはずだ。鉄でできた巨大なものであるから外すことなどあり得ない。なのに、傷がついていない。どういうことなんだ。
「くくく。いいね、いいね、その眼だよ。その眼。得体のしれないものを見て怯えているだろう。恐怖をしているだろう。俺が望んでいたのはそういうものだ。何が魔法だ、科学こそがこの世のすべてであるというのに。ハハッハ」
ハハッハと高い声でツウサンは笑い続けていた。
俺はそんなツウサンを睨みつける。俺の中にはあいつを絶対にブッ飛ばすという誓いが生まれた。
「暴いてやる。その種を絶対に!」
俺は今度は魔法を使わないで接近戦をすることとした。手には魔法で出現させた刀を持つ。基本的に武器というのは魔法で保管しておくため必要な時に出現させるだけでいい。俺の刀は機動力を生かすために長くはない。柄が真っ黒に染まっており刀身は銀色に光っている。これは鉄を錬金して作った結果だ。あいつのロボットとは桁が違うと俺は自負している。こいつであのロボットを切ってやる。
俺は動き出す。
「ふん。接近戦とは愚かだ。見せてやるオーワンの力を行けっ!」
ツウサンが命令をするとオーワンは動きだし俺に向かって突撃してくる。しかし、さっきとは違う。今度はオーワンの軌道が読める。ものすごいスピードで向かってくるオーワンがそのでかい巨体の手を俺に向かって放ってくる。いわゆるパンチだ。俺はその攻撃を横に跳んでかわす。オーワンは自分のスピードを押し殺すことができずにそのまま走り続けて俺の後ろの壁に先ほど俺が吹っ飛ばされた壁に直撃をした。
ドッガーン
爆発音がした。オーワンが壁にぶつかった音だ。
物凄い音がした。ものすごい音がしたのを物語るように壁には穴が開き一部天井から砂埃が落ちてくる。あれにさっきは吹っ飛ばされたのか。俺はよく生きていたものだと自分でも驚いていた。
「どうだ」
俺はオーワンを見つめる。これで自滅してくれれば俺にとってはラッキーだ。さぁ、動くなよ。
「ビビビ。ガシャ――」
しかしながら残念なことにオーワンは再び動き出す。ただ、鉄の体には壁にぶつかった影響かだいぶ傷ついていた。今度こそ、あいつをぶっ潰す。
俺は、気合を入れ直し刀をきつく握りしめてオーワンへと走って間合いを縮める。
「はあああああああああああ」
俺の刀がオーワンを両断しようとした─
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