第61話 ギンVSツウサン②
「ドドド」
変な音を発している。あれは一体何なんだ。今まで見たことがない得体の知らない鉄でできた人型のものだ。動いているが動力はどうやら魔法ではないみたいだ。鉄でできたものというのは世間一般の常識としては魔法で動くものと決まっている。しかし、あれは違う。
「気づいてようだな」
俺が魔法で動いていないことに気付いたことをツウサンはうれしそうに言った。何でそこまでうれしいのか俺には理解できない。
「ああ、気づいたよ。魔法が動力じゃないな。じゃあ、これは何なんだ?」
俺はツウサンにダメもとで尋ねてみる。これは奴の秘密兵器なのかもしれない。そう簡単に情報は教えてはくれないと思うが一応は聞いてみることとしたのだ。
「答えると思ったか?」
案の定答えてはくれなかった。答えてくれないというのは想定内のことであり特には問題はない。となると、ここから自分であれの正体を暴かなくてはならない。さて、どうしたものか。俺は考えていた。
「……」
俺がひたすら次の作戦を立てている様子をツウサンは見ていた。ツウサンは一切動こうとはしていない。俺も動かない。膠着状態がしばらく続いた。
「なぜ動かない?」
俺は疑問に思って口にした。俺も油断をしすぎている今の状態はどういうことなのだ。本来ならばこれほど攻撃のチャンスはないだろう。だから今攻撃するのがセオリーだ。しかし、奴─ツウサンはまったく動かないのだ。これは何かの作戦なのか俺は疑ってしまう。俺の疑問にツウサンは答えた。
「お前はこいつの正体が気にならないのか?」
そう言った。こいつというのはこの鉄でできた何かのことである。
俺はこの言葉を聞いて訳が分からなくなった。だって、さっき俺が質問したら答えてくれなかったのにこいつの正体気にならないかと言われたら誰だた面を食らうだろう。
「何を言っているんだ?」
ばっかじゃねぇのと思った。
「だから、やっぱり教えておきたくなったんだよ! 悪いかっ。人がせっかく作った自信作を馬鹿にしやがって!」
ツウサンは逆切れをした。しかしながら俺には単なる言いがかりにすぎないし何で怒っているのか理解しがたい。
「何で怒っているんだ? お前やっぱバカ?」
俺は言った。さすがにこの言葉を言ったらこの後どうなるか理解できることであるが俺には言わずにはいられなかった。
「ふん。お前には科学者の気持ちというのがわからないのか。お前こそバカな奴だ。いいだろう。人をバカにしたからにはここでそれ相応の痛みを受けてもらう。さぁ、俺の自信作科学時代の技術の総結集ロボットオーワン発信っ!」
「!」
ツウサンは怒った。もちろん怒るということはわかっていたがあの鉄のもの(ロボットと言うらしい)を突如として動かし始めた。
「ドドドド」
ロボットは熱を発生させ動き出した。その様子を見て俺は直感的にこれはまずいと感じた。1回後ろにでも下がってあのロボットと間を開けなくてはいけない。そう思って俺は足を下げようとした。次の瞬間。
「ドドド」
ビューン
ダガーン
「なっ!」
ものすごい風を切るような音と共にロボットは一瞬で俺との間合いを一気につめたのだ。これには俺も反応できなかった。俺の視界にあったのは動く前にあったロボットの残像だけであった。だからかわすことなど当然できずに俺は壁へと飛ばされた。
ドッガーン
俺は壁に思いっ切りぶつかった。痛ってぇ。俺の意識は失われかけていた─。
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