第60話 ギンVSツウサン①



 「その眼がそんなに見たいなら見せてやろうかっ!」



 俺が思いっ切り叫ぶと3人が一斉に俺の方を向いたのであった。



 「ギンさん!」



 「ギン!」



 ピーチェとあいりすは俺が来たことで安心してくれたみたいだ。喜んで声を上げた。しかし、もう一方の敵の男は俺をずっと睨みつけている。男は無言であった。



 「ピーチェとアイリスをよくも囚われの身にしたな。お前はこれからきっちり仕返しをしてやる」



 俺は男に対してそう宣言をした。男はそれでもずっと無言を通している。俺には気味悪く感じられた。少しは感情を出せよと言いたかった。



 「何も言わないのだったらただ一方的に殴られるだけになるぞ」



 俺は言う。この言葉を聞いてかようやく男は口を開いた。



 「ふん。一方的に殴られるだけか、俺も甘く見られたものだ。ギンよ。そもそもお前は俺が誰だか知らないだろう。どうして俺がお前のことを知っているのかということもな」



 「!」



 確かに。俺はそう思った。俺はあの男のことを何1つも知らない。なのにあの男は俺の名前を俺のことを知っている。俺が忘れているだけであの男と以前どこかで会ったことがあるのか。真剣に考えていた、思い出そうと努力をした。しかしながら俺の記憶の中にはあの男は存在しなかった。では、あの男は何で俺を知っているんだ。



 「俺のことがわからないのか。そうか残念だ。ギンのことはずっと知っていた。お前なら俺の研究の良い材料になってくれるとエイジアで初めて見かけたときからね」



 「材料?」



 俺が良い材料とはどういうことだ。そもそもエイジアで初めて見たときからって俺とは直接会った訳ではないということか。だから俺は知らなかったのか。ということは……



 「俺のことがわからなくて残念って言われても知らねぇよ」



 お前だけが知っていて俺は知るはずがないだろう。そもそもそろそろ俺の心の中であの男というのが面倒になってきたのであの男の名前を聞いておきたいところだ。名前以外にも聞いておくべきことはある。



 「お前は、お前の名前は何だ! そしてお前は何が目的なんだ」



 俺は声を張り上げて叫ぶ。いい加減に名前を教えやがれと俺は思っていた。男はもったいぶらせることなく名を名乗り出た。



 「ふん。そんなに知りたいのならばいいだろう。俺の名前はツウサンだ。そして、お前がいい材料だと言ったのはこういうことだっ!」



 ツウサンと名乗った男はそう言うと手に隠し持っていたらしい何かのボタンを押した。すると、突然部屋中にすごい音が鳴り響いた。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 音の発生源はツウサンの後ろであった。ツウサンの後ろの通路の入り口の向こう側から何かがドシンドシンと徐々に徐々に近づいてきている。俺には音の正体が全くわからなかった。一体何が近づいているんだ。



 ドガーン



 俺がその正体を考えていた次の瞬間にツウサンの後ろの通路の入り口が突然爆発してものすごい爆発音が鳴り響いた。その爆発音と一緒に破片が飛んでくる。



 「ちっ! 風の舞!」



 俺は後ろにいるレイをかまうように風の舞を発動させて防御壁代わりにした。これは緊急回避として使ったのはいいが俺の肩には破片が数個刺さったのか血が流れている。



 「レイ! 少し下がれ!」



 俺はまず、後ろで俺の様子を見ていたレイにもっと安全な場所に下がるように命令をした。これから先何が起こるかわからない。さっきみたいに守れる時もあれば守れなくなるかもしれないと考えたからだ。



 「わ、わかりました」



 レイはおとなしく言うことを聞いてくれた。こういう時に素直だとありがたいものだ。さて、それは置いておいてまずはあれをどうにかしないとな。


 俺は目の前に現れた巨大なものを見つめる。それは鉄でできた動く人型のものであった。



 「ドドド」



 変な音を発している。俺にはあれが何なのかわからない。あれは一体何なんだ。

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