第59話 その眼(ギン視点)



 ピーチェとアイリスが男と話している最中のこと。



 「ギンさん。もうすぐ出口ですよ」



 「ああ、やっとか」



 俺はレイと共に歩き続けていたがようやく出口へと差し掛かろうとしていた。やれやれやっとだと俺には安堵感が湧き出ていた。しかし、安堵感があるのになぜか胸がモヤモヤしていた。このモヤモヤの正体が何のかわからないままであった。



「早くギンさん出ましょう」



 レイがそう言うので俺も出口へと出ようとする。しかし、俺はレイに止まれと命令をした。



 「どうしました?」



 「少し様子がおかしい」



 俺はレイに聞かれたので答えた。


 俺達が出ようとした瞬間、向こうの様子がおかしいことに気が付いた。なので、少し遠くから向こうの様子を観察してみることとした。


 向こう側には男が話していた。俺の知らない男だ。その男は話していたのだが俺が見る限り他に人は見当たらなかった。じゃあ、誰と話しているんだ? 俺には不思議に感じられた。俺が考えていると横からレイが俺の肩を叩いてきた。



 「ギンさん」



 「どうした? 今は忙しいのだが……」



 俺が言い終えないうちにレイが衝撃のことを言ってきた。



 「上を見てください、上を」



 「上?」



 俺はそう言われて上を見た。



 ベシン



 ビンタされた。もちろんレイにだ。レイの顔は真っ赤だ。



 「上って私のむ、むむむ胸じゃないです! だから向こうの部屋の天井のことです」



 レイはめちゃくちゃ慌てている。俺はレイの薄い胸を見ていたからだ。……いや、反省しています。とりあえずレイの言うとおり天井を見てみた。すると驚いた。



 「ピーチェ! アイリス!」



 俺は叫んだ。



 「ギンさん声がでかいです」



 レイに言われた。俺はとっさに口を押える。どうやら向こう側は俺達には気が付いていないようだ。それは運が良かった。


 ただ、運が良かったとは完全には言えない。なぜなら敵方にピーチェとアイリスの2人は囚われているのだから。俺は早く2人を助けなければいけないと思った。



  「あなたの目的は何なのっ!」



 俺の耳にはピーチェの声が聞こえた。俺はこの時話の続きが気になったのである魔法を発動した。



 「バーギング」



 バーギング


 風属性 技ランク3


 能力 遠く離れた相手の声を聞くことができる



 「ギンさん、話が聞こえます」



 俺は自分とレイを魔法の対象としたためレイにも相手の話が聞こえるようになった。この魔法は名前の通り盗み聞きする魔法だ。これならば会話を聞くことができる。俺達はしばらく黙って会話を聞くこととした。



 「くくく。まだ、抵抗しようとするのですか。いいでしょう」



 男はそう言うと不気味な笑みを漏らし指を鳴らした。


 パチン



 指が鳴ったのと同時に悲鳴がこの空間に響いた。



 「きゃあああああああ」



 「ピーチェ!?」



 ギシッ。唇をかんだ。ピーチェがひどい目に合っているのに俺は何もできないのか。



 「いいねいいね、その眼。その眼だよ。俺が求めていたのは。俺はその眼を見たかったんだ。これならギンの奴からもその眼を見ることができる。最高じゃないか。ハッハハッハハ」



 俺はその会話を聞いていてついに我慢ができなくなってしまった。相手はどうやら俺のことを知っているらしい。俺はレイにすまないと一言だけ言った。レイはギンさんですからと言って何も責めなかった。俺はそのまま部屋へと向かっていった。そして、男相手に口を開く。



 「その眼がそんなに見たいなら見せてやろうかっ!」



 俺が思いっ切り叫ぶと3人が一斉に俺の方を向いたのであった。



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