第57話 地下通路



 「ああああああああああ」



 「きゃああああああああ」



 俺達は今落下している最中であった。だからこんな悲鳴を上げているのだ。あまりにも落下している時間が長いことから考えて結構深い場所まで行ったと考えるべきだ。しかし、こんなことを考えている今なお俺達は落下を続けている。



 「ギンさんー。下が見えてきましたああ」



 レイは俺に向かって叫んできている。俺はその言葉を聞いて答えた。



 「下?」



 俺はレイの言葉の通り下を見た。



 「ちょっとギンさん。どこ見てるのですかっ! 下っていうのは地面のことですっ」



 「あっ、すまない」



 ちなみに俺がレイに怒られたのは下と言われたのでついレイの下半身を見てしまったのだ。レイは未だパンツ姿だ。ごほん。じゃなくて、真面目になろう。俺は今度こそレイに言われた通り地面を見た。俺達と地面との距離はあと数十メートルもないだろう。このままだと俺達はそのまま落下した時に砂がなければ死んでしまう。暗くてあまりよくわからないが最悪の場合下が砂ではないかもしれない。俺は魔法を唱える。



 「木枯らし1」



 木枯らし1


 風属性 技ランク1


 能力 微弱な風を発生させる。敵に対して使う攻撃用ではなく補助用魔法。



 木枯らし1は技ランク1の補助用魔法だ。俺はそれを発動する。発動すると同時に俺とレイの体の周りには風が纏わりつき落下速度を緩めてくれた。



 「よいっと」



 「ふぅ~」



 俺とレイは傷1つ着くことなく無事に着地をすることができた。地面は石でできていたため魔法を発動しなければ死んでいたと考えると恐ろしいものだ。とっさの判断がなければ今頃は……。



 「ギンさん。これからどうします?」



 レイが俺に聞いてくる。周りを見渡してみるも行く道は一本道でありその道の様子から先はまだ長く感じられた。



 「とりあえずはこの道をひたすら進むしかないな」



 俺は落ちてきた天井部分を見るが特に気になるようなことはなかった。俺達が落ちてきた場所はまたまた地下通路の行き止まりの部分であった。一応、壁に何か書かれていないか確認するために見てみる。そこには上と同じように科学文字が書かれていた。だからここも上と同じ遺跡であることは間違いないと確信することができた。



 「じゃあ、行くぞ」



 「はい、ギンさん」



 俺はレイと共に地下通路の奥へと歩き始めた。ただ、今回は魔法を発動しない。それは壁にはたいまつの火が炊かれていることから近くに人がいるかもしれないと推測はできた。その人こそ俺達をここに導いた犯人である。俺はそう考えた。誰がこんなことをしたのか? 俺には想像もつかなかった。



 ……


 ……



 「な、長い」



 「ここも上みたいに結構長いですね」



 俺達が歩き始めてから数十分。まだまだ先は長かった。何でこんなに地下通路というものは長く作られているんだ。俺はいらついていた。



 「まあまあ、ギンさん。落ち着いてください」



 隣りを歩いているレイに宥められてしまう。俺はむすっとしていたが落ち着きを取り戻していく。



 「ただ、これだけ長いとイラつくのも仕方がないだろう」



 俺は言う。レイはそれを聞いてくすくすと笑った。何がおかしいんだ。



 「何がおかしい」



 俺は少しすねた感じで言った。すねたというよりは人から言わせてみれば完全に怒っているだろうと言われる口調でだ。


 レイは俺の言葉を聞いてただ一言。



 「何でもないです」



 レイは笑っていた。笑顔だった。その顔の表情はどこか楽しそうに見えたのだ。


 ただ、俺にはレイが


どうして笑っているのかがわからないので俺は尋ねてみた。しかしそれ以上尋ねてもレイは一切答えてはくれなかった。

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