第56話 落下
「ん?」
今誰か俺のことを呼んだような気がしたが………気のせいだよな。俺達は未だ長い長い地下通路を歩き続けていた。一緒に横を歩いているレイはそろそろ疲れてきている。1回ここいらで休憩を取っておいた方がいいかもしれないな。俺はそう思い。レイのためにも1回休憩をすることとした。ちなみに未だレイの服になりそうな物は見つからずピーチェとアイリスの2人とも合流はできていない。俺達は何の目標もうクリアしていないのだ。
「どうしたものか」
俺はため息を思わずついてしまう。ここまで歩いても何も見つからないなんて最悪の展開だ。このままレイと一緒にいるのは男としてかなり危険なものだ。
「わ、私は別に大丈夫ですよ。ギ、ギンさんなら」
レイがそう言ってくれるのはとてもありがたいことなんだが今の俺には半殺しに近いものだ。俺の自制心が持つうちに何か対策を打っておきたい。俺達はそのような会話をしながらも長い長い地下通路を歩き続ける。この地下通路には出口という概念は存在しないのだろうかまだまだ先は長いように思わされた。
「出口ないですね」
レイはそう言ってくる。それには同感だ。
「いくらなんでも長すぎる。まぁ、上が砂漠だからこれぐらいの大きさものともしないかもしれないだろう」
よくよく考えてみるとこの地下通路の上はテンテン砂漠だ。砂漠ということはかなり広大な規模を持っている。これぐらい長い地下通路があってもおかしくはないだろう。
レイもなるほどと頷いてくれた。
話をずっとしているがそれでも長い廊下はまだ続いている。しかも一本道なのが嫌なとこだ。本当に出口に向かっているのか怪しく思える。と言っても、分かれ道があればなおさら道がわからなくなって本当に出口に向かっているのかという疑心暗鬼に陥るが。
………。
………。
それからまた数十分は歩いただろうか。俺達はようやく自分たちの目の前に明かりが見えたことに喜びを感じていた。これでようやく出口か。俺は自分の指の上に宿っている火の粉を解く。レイは火の粉が見れなくて残念ですと少し落ち込んだが俺的には魔法の使い方が間違っている気もすると言おうとするもあえて言わない。
ちなみにこの数十分間何の問題の解決はしていないのが現状だ。
「とりあえず、気を付けてレイ。何があるかわからないから」
俺はレイに細心の注意を呼び掛ける。レイも俺の緊張感を読み取ってくれたのかここは素直に従ってくれる。前にもこんなことがあった。その時は隣りにいたのはアイリスであったがそんなことは些細なことだ。気を付けなければいけないことはあの時みたいに目の前に敵がいた時のことだ。
「行くぞ」
俺は合図をかける。レイも頷く。
バッ
俺は戦闘の時のための備えをしながらも明かりの先へと進んでいく。
しかし、そこにあったのは………。
「何もない。はずれか」
「何もないですね」
俺達が入ったのは大きな部屋であったがその部屋には何もなかった。上下左右あらゆる場所を見渡してみるも人1人の姿が見えずさらには部屋にあったのはシャンデリアの明かりぐらいだった。シャンデリアは結構高級なものだから人が最近までいたのは間違いないと考えてもいいだろう。では、その人は今どこにいるのか。ここ以外にまだ大広間のような部屋が存在しているのか。だが、俺達が通ってきた道以外に進める道など存在していない。このことが指しているものは一体何だ。
「ギンさん。どうしますか?」
レイは周りを確認しながら聞いてくる。レイがここまで注意深く周りを見てもないということはここにはもう何もないということだろう。しかし、先に進める道がないのはどうすればいいことだ。
ドドドドドドド
部屋中に突然でかい音が鳴り響いた。
何だこれは。
「ギンさん!」
レイは叫んでくる。俺に何が起こったのか状況の説明を要求しているみたいだが俺には訳がわからん。これは何なのだ。
ドドドドドドド
音がどんどん大きくなっていく。そして、次の瞬間には俺達が立っていた床が抜けた。正確に言えば床がぱかっと開いて俺達は落ちたということだ。
「ウソだろおおおおおおおおおお」
「きゃああああああああああ」
俺達は本日二度目の落下を経験した。今度はどこに落とされてしまうのか俺はこれをやっているのが誰なのか知りたくなりなおかつ余計に犯人を捕まえたくなってきた。
─砂漠の地下???(?視点)
「何この悲鳴?」
「でも、どこかで聞いたことがあるような」
一方囚われの身となっているピーチェとアイリスの耳にはちょうどギンとレイが落下している時に出した悲鳴が届いていた。
「ククク。これで私の計画も一歩成功へ進む」
その囚われているピーチェとアイリスを監視している影が存在した。その影はすべてはある男をはめるためだけに今日の日まで生きてきたのだ。
「これでこれであの男を殺せる。待ってろよ二級魔術師ギン」
その影は不気味な笑みを漏らしすぐに来る人生最高の時間に思いをはせていたのだった。
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