第53話 強くなれるさ
俺達は謎のものに砂地獄で引きずられた。ここはどこなんだ? 俺は、砂地獄に巻き込まれた。あの時絶対にだ。そして、今真っ暗な空間にいる。この空間はいったいどこなんだ。俺は、動こうとする。いい加減動かなければ何も始まらない。それに、ピーチェ、レイ、アイリスの3人も探さなければならない。こんな暗い中だ。きっと怖いに違いない。
俺は立ち上がる。
「よし、行こう」
小言でつぶやく。
俺は、壁に当たらないためにも手を前に出す。その次の瞬間に、
むにゅ
おっ! 今なんだか柔らかい感触がしたぞ。これはなんだ。俺は、そのものを確認するためもっと触る。結構やわらかいがあまり大きくはないな。いったいこれはなんだ。俺は、それ揉み続ける。
「やぁ、やめてええ」
何だかレイの声が聞こえた。息使いが荒い。も、もしかしてこれって。俺は自分がずっと触っていたものの正体についに気づいた。
「ギ、ギンさん。や、やぁめてください。それわ、私のむ、胸です」
「ご、ごめん」
俺がずっと揉んでいたのはレイの胸だったのだ。俺は謝った。パンツだけではなく胸まで揉んでしまうとはこれじゃレイに嫌われてしまう。本当に最悪だ。それにしても、レイの胸って意外と大きくないんだな………反省反省。
「本当にすまない」
もう一度謝る。レイに許してもらえなくてもいいという覚悟の上でだ。だけれども、レイは優しかった。
「大丈夫です。それにギンさんなら私は………」
「えっ、何聞こえなかった」
レイの言葉は最後の方は小さくてごにょごにょしていて聞こえなかった。
「何でもないです、ギンさん変態」
「なっ」
確かに変態と言われても仕方がないだろう。俺は、おもいっきりレイの胸を揉んだのだから。しかし、このまま変態というレッテルを張られるわけにもいかない。俺は、レイの機嫌を良くしようと努力する。
「レイ、すまなかったから何か1つ何でも願を聞いてあげるよ」
俺はとっさにこんなことを言ってしまった。後で、このことを言ったことが後悔するとは知らずにだ。俺の提案にレイの顔はとたんにはまるで花が咲いたかのような笑顔となった。
「ありがとうございます。別に私はギンさんに怒っているわけではありませんよ。それに今の話は約束ですよ」
レイはそう言ってくる。
「ああ、約束は破らないさ」
俺もちゃんと答える。俺も男だから二言はない。一度言った約束は守るさと付け加える。
レイはとてもうれしそうだった。これで、レイの機嫌も良くなってくれて俺の変態疑惑はとれたことでいいか。
「ところで、ピーチェとアイリスは知らないか?」
俺は、レイに訪ねてみる。周りは暗いのでよく見えないが少なくとも俺たち以外に人の気配がしないのだ。
「いえ、私は知りません。でも、一緒に砂地獄に巻き込まれたのは見ました」
「そうか………」
俺は少し考える。俺達と巻き込まれたとなるとこの地下空間のどこかに2人もいるはずだ。早く探さないと2人の身に危険があるかもしれない。特にアイリスはまだ魔法を覚えていないからピーチェと一緒に行動をしていなかったときは本当に最悪のケースになるかもしれない。俺は、とりあえずここの明かりをつけることとした。
「火の粉」
火属性の魔法を発動する。
火の粉
火属性 技ランク1
能力 威力がほとんどない火の粉が出てくる
俺は、火の粉を自分の指の先に宿す。俺の左手の人差し指には少し明るい火が灯りこの真っ暗な空間を少しだけ明るくした。
「あっ、少し明るくなりました」
レイは喜んでいる。
「レイは暗い場所は嫌いか?」
俺は尋ねる。レイはこくんと頷く。おそらくは、暗かった盗賊団のアジトに閉じこまれていたことが原因なんだと思いそれ以上は聞かなかった。
「それでさ、レイ」
俺は少し気まずそうにレイに言うことがあったので話す。
「? 何ですギンさん?」
レイはまだ気づいていない。先ほどまで暗くてよくわからなかったがよくよく考えてみると地上でのある件についてまだ決着がつくことなく砂地獄に巻き込まれてしまっているのだ。そのある件というのは、
「レイ、ズボンはどうする」
「へ?」
間抜けな声がする。これで何回目だろう。今日はよくレイの間抜けな声を聞く。レイは自分の下半身を見る。そこにはズボンが投げている状態ではなく最初からズボンをはいていない状態となっていた。
レイの顔はかぁ~とすぐさま真っ赤になり地面にしゃがみこんだ。もちろんパンツを隠すような形でだ。
「ギンさん見ないでぇ」
泣きながら言うがもう遅かった。またしてもレイの白いパンツを見てしまった。これではもう俺は変態だ。
「とりあえず、着れるものを探してくる」
俺はレイのためにも着れるものを探してこようとその場から離れようとする。しかし、俺の手をレイは握った。
「い、行かないで。わ、私を1人にしないでください」
レイは泣きながらそう言った。その声を聞いた俺はレイの隣に座った。俺は1つの思い当たる線があった。レイはお父さんを殺されているから1人にされるのが嫌なんだ。俺はそれに気付いてやれなかった。なんて、甘かったんだ。自分に反省をする。自分を責める。そんな俺の内心を読み取ったのかレイは俺に言う。
「ギンさん、自分を責めないでください。これは私が弱いだけなんです。私が弱いからいけないんです」
レイは言う。だが、俺はとっさにこう答える。
「それは違う!」
強い口調であったためレイはビクンと怯える。
「ああ、すまない。驚かせるつもりはなかったんだ」
俺は、レイを驚かせてしまった、怯えさせてしまったことを謝る。
「レイ、お前はもう弱くないさ」
俺は語りかけるように言う。
「なんで、なんでそんなことわかるのですか」
レイは自分が弱いということを認めているが上に俺の言葉に反論する。
「レイは俺達と旅を始めてから最初にあったころに比べて明るくなったと思う。それはもうお父さんが殺されたという過去を乗り越えたからじゃないのか」
俺は語り続ける。レイは、それども反論を続ける。
「それは、そのことを忘れていたからです」
「じゃあ、これからもこのことを引き続けるのか」
俺の最後の言葉でレイの反論は止む。それは、自分が過去と決別をしなければいけない時であった。少しの沈黙の後、レイは口を開く。
「私は強くなりますか?」
それはまだ自分が強くないとそれでも思っているが上の言葉だった。俺は、それに対して一言だけ言う。
「強くなれるさ」
レイは泣き止んだ。顔を上げて俺を見つめてきた少女の顔はいつまでも忘れることのないくらいとびっきりの笑顔だった。
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