第54話 奥へ
「さてと」
俺達はまだ何も解決をしていなかった。そもそも俺がレイの過去について前に行こう、もっと強くなれると言ったのは本来の話とは別のことであった。さて、本来の件とは未だに引きずっているレイの服についてだ。
「服になりそうなものとかないよな」
俺はぼやく。しかし、いくらそんなことを言ったところで何も起こらない。レイは申し訳なさそうにしている。
「そんな顔するなよ。俺がどうにかしてやるから」
俺は慰めに声をかける。しかしながらレイは間が悪そうにしている。
「そう言われても私さっき強くなると誓いましたのに悪いですよ」
レイはそう言ってくる。だけれども俺はそれでも何かしてやりたいと思った。だから、レイのためにも服になりそうなものを周りを見渡して探してみる。しかし残念ながらそのようなものはあいにく存在しない。
「わ、私は別にこのままで我慢をしますよ」
レイはついにはこんなことまで言ってくる。だが、それはちょっと。
「いや、そう言われても俺としてはちょっと………まずいんだけど」
俺としてはやはりまずい。パンツだけの女の子と一緒にいるなんて男としてはまずいものである。レイはものすごく顔が真っ赤に染まっているがそれでも退かない。
「迷惑になるくらいならこの恰好でいます。私はもっとギンさんの役に立ちたいのですから迷惑にならないようにしたいのです」
レイの瞳からは涙が出ている。それはレイの覚悟なんだろうか。ただ俺としては大変まずいことであるからこの後どうすればいいのだろうとひたすら考え続けていた。しかしながらこのままだとらちが明かないのでとりあえずは先に進むこととした。先に進めば何か見つかるかいい案が思い浮かぶだろうと信じてのことだ。
「じゃあ、何か着ることができそうなものを探してみようか」
「はい」
「もちろん、レイも見つけたら言ってくれ」
「わかっています。私もずっとこのままでいるつもりはありませんから」
そう言うと、俺達は暗い地下通路を俺の発動した魔法火の粉だけで照らしながら闇の中へと進んでいった。
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