第51話 レイのハプニング
俺達がシュームの町を出てから少しした後、エイジアへ向かう最大の難所へと差し掛かることとなった。それがあの例の場所である。例の場所というのは………。
「わぁ~! 大きい砂漠」
「これが砂漠ですか」
「砂漠だぁぁぁぁ」
ピーチェ、レイ、アイリスの3人がそれぞれ別々の反応をする。
俺達は、今エイジアとアフーカの途中に位置しているテンテン砂漠にいる。このテンテン砂漠は俺にとっては軽いトラウマの巣窟なのだ。何がトラウマかというとそれは、俺がアフーカに行く途中のことだ。ここで大量のサソピエルと出会いそして付き合うこととなった。それはもう最悪だった。もうあんなことは2度と起きてほしくはない。ちなみに行きはエイジアからアフーカに直接この砂漠を通って行った。シュームを通るルートは遠回りになるが安全であることで帰りは採用している。息は俺1人だけであったから危険な方のルートを使ったのだ。
それにしてもこんなに仲間が増えるなんて予想もしていなかったぜ。
「砂漠だぁぁぁぁ! 楽しいいい」
アイリスが1人砂漠で楽しんでいる。砂漠の砂を触ったり投げたりいろいろしている。ピーチェとレイはその様子を見て笑っている。
だいぶ仲良くなってきたな。本当に良かった。カフェ・ブルンではどうなるかと思っていたが今となってはそれが杞憂となり本当に良かった。
「やっほー」
「ピーチェ! 何をするの!」
俺の目の前ではピーチェがレイに砂を投げていた。これって海とかで水を掛け合うものではないのかと俺は疑問に感じたが3人はそんなこと考えてはいない。
「それー」
「きゃ」
レイがピーチェに反撃として砂を投げる。それを顔に食らったピーチェは悲鳴を上げる。横にいるアイリスはその様子を見て笑っている。ピーチェは怒って、アイリスに砂を投げる。
「きゃあ」
アイリスにも直接顔に砂が当たる。アイリスは仕返しとしてピーチェに投げる。レイも投げる。ピーチェも投げる。3人して砂の掛け合いっこをしていた。
その様子を見て俺は思っていた。
「平和だなぁ」
心の中で思っていたことだったのに口に出てしまった。まあ平和であることが一番幸せなんだからいいことだけど退屈でもあるんだよへぶっ。
「!」
考えている最中に突然の奇襲を受けた。何事だ。俺は、ピーチェ、レイ、アイリスの方を見る。3人は俺を見て笑っていた。
「ギン、おもしろい」
「ギンさん!」
「ギンさん。楽しいですよ」
アイリス、ピーチェ、レイの順番で声をかけてくる。俺は、このしぐさで分かった。誰かが砂を投げたということをだ。
「誰だよ砂を投げたのは?」
「レイ」
「アイリス」
「ピーチェ」
3人が3人別々に人を指でさしている。つまりは責任の押し付け合いというよりは、
「全員か」
俺は、近くにあった岩に座っていたがよっこいしょと立ち上がる。そして、3人に砂を投げる。
「「「きゃあ」」」
3人に見事に当たる。ナイスコントロールだ俺。1人内心でほめてみる。
「やりましたね」
レイが本気になる。
「えぇい」
レイはかわいらしい声で俺に向けて砂を投げてくる。だが、俺には簡単には当たらない。俺は右へ飛騨路へ軽やかなリズムで避ける。
「む」
「ギンすごい」
「流石はギンさん」
レイは渋った顔をしている。これは勝ちかな。一方のアイリス、ピーチェは俺を称賛する。なんだか照れくさいな。
「まだです」
レイはまだあきらめてはいなかった。意外とレイは頑固なんだよな。俺は、いつの日か思っていたことを思い出した。
「いいぜ、レイ。さぁ、こいっ!」
俺も受けて立つ。俺とレイの間には緊張な空気が漂った。ような気がした。
「ギンさん! かくごぉ!」
レイは砂を投げてくる。だが、さっきと結果は変わらない。俺はまたもや右へ左へ華麗に避けてみせる。
「イケイケギーン」
「きゃあギンさん。かっこいい」
なんか外でめちゃくちゃ楽しそうに応援している2人がいた。やっぱり照れるな。そんなことを言われてしまうと本当に照れる。やめてもらおうかな。まぁ、本人たちが勝手にやっているものだから仕方ないか。
「まだですー」
レイは、まだあきらめない。まだ砂を投げ続ける。砂漠の砂というのは永遠に近いくらいあるからこのままだと永遠に終わらない。ここら辺でレイに諦めさせないといけない。
さて、どうしたものか。俺にはどうやればいいかわからなかった。ただ、俺が今考えているこの最中でもレイは砂を投げ続けている。確かにこれは楽しい。楽しいけどここら辺で辞めたいのが本音なんだよぉ。誰かぁ。と心の中では助けを求めても何にもならない。ここはやっぱり自分だけが頼りとなる。
「まだですよー。まだ、まだです」
はぁはぁとレイの息がだいぶ上がってきた。もともとレイは体力がなかった。今は旅を始めた頃よりは体力アップしているとしてもそれでもまだまだなのだ。だから、そろそろ疲れてくる頃だと思っていた。結構粘ったから変な場所で体力アップの効果が発揮してしまっていた。
「おいおい、大丈夫か」
俺は、レイが付かれていることを考慮して気遣いをする。ただ、レイは断る。
「まだ、大丈夫です。これでも体力は上がっていますから。それにギンさんと一緒に遊べて楽しいですので………」
「最後何て言ったんだ?」
レイの言葉は最後の方はごにょごにょしていたうえ小さい声で聞こえなかった。なので、尋ねてみる。しかし、
「何でもないです」
レイの顔は赤くなっていた。それ以上は言わない。
「レイずるーい」
「ひどいよ」
ピーチェ、アイリスがレイを非難している。あの2人は何を怒っているんだ? 俺にはまったく理解することができなかった。
「それじゃあ、どうする」
俺が改めてレイに提案する。もういい加減に諦めただろうと思ったうえでだ。
「隙アリです」
レイはすかさず俺に向けて砂を投げてくる。しかし、緊急回避をすることができた。
「レイ、これでどうだ」
俺は、少しドヤ顔で言う。
「はぁはぁ、まだです」
それでもあきらめない。これは遊びだったはずなんだがどうしてこうなったのだ。俺は、何でこんなことをしているのかわからなくなった。まぁ、遊びだからいいか。結論は簡単につけた。
「じゃあ、こっちからも行くぞ」
「へっ?」
レイが間抜けな声を出した。俺からくるとは思ってもいなかったのか。俺は、レイに向けて砂を投げた。レイはとっさに回避しようとする。しかし、体力の問題なのか避けるだけの力がなく砂がレイに当たる。
「ああ」
レイは残念そうな顔をする。そんなレイを俺は見ることができずにとっさに横を向く。
「ギンさん。なんで横を向くのですか?」
レイが俺に質問してくるがそれでも見ることができない。そこにピーチェとアイリスが遠くから観戦をやめてこっちにやってくる。
「「ギン(さん)!」」
2人は怒っている。何で俺なんですか。
「仕方ないだろ。だから横を向いているんだ」
俺は半ばやけくそに声を張り上げる。この事態に気づいていないのはただ1人現況のレイだけだ。レイは未だ首をかしげている。
「2人ともどうしたの?」
レイは、ピーチェとアイリスに俺が何でレイを無視しているのか聞く。
「そりゃあ、だってね」
「うん。まぁ、自分の下半身を見てみなよ」
アイリスはごまかしていたが、ピーチェは答える。レイはピーチェに指摘を受けたとおりに自分の体の下つまりは下半身の部分を見る。
「きゃあああああああ」
今度は完全な女子の悲鳴だった。遊びではなく本心からの悲鳴だ。この悲鳴は砂漠中に振動しただろう。
さて、俺が何でレイを直視できなかったのかというと………。
「なっ、何で」
レイも動揺している。その場でしゃがみこんでいる。
さて、何があったのかというとレイのズボンがするりと脱げてレイの白いパンツがおもいっきり俺には見えていたのだ。おそらくはズボンが緩かったのだろう。それで遊びすぎて夢中になった時にするりと脱げてしまったというわけだ。
「ギンさん」
レイが涙目で俺を見てくる。
「本当にすまない」
俺は謝る。レイのパンツを見てしまったことについてだ。
その後、しばらくレイは戦闘不能状態であった。
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