第48話 ギンVSルイ④

 「さぁ、とどめと行くぞ」



 俺はルイに向かって言い放った。この言葉は勝利を確信してのセリフだ。ただ、勝利を確信したと言っても油断をしたわけではない。もちろん、ここから反撃をされるかもしれない。そう言ったことには十分警戒している。だから、俺はルイをじっくり注視するように見ていた。だからこそ、それが最大の失敗であり油断となってしまったのだ。



 「ふん。ギンはダメだな」



 ルイは口を開く。俺にとどめ笹れようとしている場面でだ。これは異常だ。辞世の句でも言って、諦めてくれるのか。そんなことはないだろう。では、何をするんだ。



 「何がダメなんだ」



 俺は尋ねる。ルイの言葉の意味が気になったからだ。



 「わからないのか。いいだろう、ギン、お前は優しすぎる。ギンには我を殺すチャンスはいくらでもあった。しかし、ギンは俺を早くは殺そうとはしなかった。それが甘い証拠だ」



 ルイの言っていた指摘は俺にはぐさりと来た。ただ、殺せなかった。殺す機会は実際にはなかったんだ。俺はそう口に出そうとした。



 「俺には殺す機会がなかったなんて言うなよ。お前は自分でも気づいているはずだ。まぁ、俺には関係ないんだがな」



 途中からルイの奴はもはや別人のような口調と穏やかな雰囲気を醸し出していた。



 「………」



 俺は何も言い返すことができなかった。



 「ギンは優しい。それは確かにいいことだがそれが大切な人を守れなければ捨てろ。お前は、実は気づいているんだろ。そのことを誰よりもな」



 ルイはもう敵なのかわからなかった。それほど、俺のことを理解していた。俺は、その場から動けなくなっていた。俺にはもう何もできない。俺の心は俺かけようとしていた。



 「ギーン! 諦めないでよっ!」



 心が俺かけていた俺だったがそんな俺の耳にはアイリスの声が響いた。


 俺は、アイリスの方を見る。アイリスは遠くからまだ応援してくれている。俺は、その姿を見て元気になった。俺の俺かけていた心は復活を遂げた。



 (それでこそギンだよ)



 俺の脳内の中に懐かしい少女の声が響いた。しかし、俺はその響いた声は気のせいだと言い聞かせていた。



 「折れかかっていた状況から復活できたか。ならもう、俺の役目は終了か」



 ルイは独り言をつぶやく。ただ、そのことが何を指しているかわからなかった。



 「役目ってなんだよ」



 俺は叫ぶがルイはその言葉を無視して最後に挨拶をする。



 「それでは、今回はこの辺でさようなら」



 そう言うとルイは消えた。おそらくは瞬間移動系の魔法を使ったのだろう。俺は追いかけるのをあきらめてアイリスと共に闇市場へと戻っていった。



 「ギンどうするの?」



 「もちろん………」



 俺とアイリスは2人で協力して闇商人を1人残らず逮捕していった。そこにはここの警察も突撃してきて事件は無事に解決したのだった。



 ─シュームの近辺の森─



 「ずいぶんと遅かったじゃないの、ルイ」



 「悪い悪い。少し遊んできてしまった」



 シュームの近辺にある森の中で黒い服を着た2人組が話をしていた。1人は先ほどまでギンと戦っていたルイ。そしてもう1人は………。



 「お前はいつまでギンを見守っているんだ、なぁラン」



 もう1人は女性だ。その女はランであった。そう実は、ルイはランと同じ組織の人間であった。以前、ギンがサソピエルと戦っときに監視していた2人組とはまさにこの2人だったのだ。だからルイが闇市場のボスというのは全くのウソである。おそらくは今頃、本物のボスは権威の城の中で遺体となって発見されているところであろう。ルイにはボスだと嘘をついてもやることがあったのだ。



 「あなたに言われたくないわ。あなただって、ギンをだいぶ試したんじゃない?」



 「………」



 ルイは無言であった。ランはルイには何か考えがあるのだろうと思ってそれ以上は言わなかった。



 「それじゃ、行きますか」



 ランはそう言うとルイと共に森の奥へと歩いて行った。



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