第45話 ギンVSルイ①
「行くぞ」
「大丈夫です」
そう言うと俺とアイリスは長い廊下を出た。そして、俺達がそこで待ち受けていたものとは………。
「やあ、ギン。そしてアイリスだったかな」
「お、お前は!」
「フフフフ」
俺達は出た先である男とあっていた。その男はまるで俺達がここに来るのをずっと待っていたかのように感じられた。俺は、続けて言う。
「誰だ!」
ドタン
何かが盛大にずっこけた音がした。確かにここまで伸ばす必要性はなかったかもしれない。でもあいつのことを知らないのは事実だ。
「ギン。あいつのこと知らないの」
アイリスは尋ねる。
「知るか。初見の奴だ。俺の知り合いにはあんな奴いねぇ」
俺は正直に答える。アイリスこそ知らないのかと聞くも知らないと即答されてしまった。
「お前は誰なんだ?」
俺は聞く。ただ、答えてもらえないと半ばあきらめでもあったが、それにどの道ここで逮捕するか最悪殺すことになるから名前を知らなくても問題はない。
「お前は誰か。フフフ本来なら答えてあげないのが我だが今は最高に調子がいいから答えてあげよう。我の名前は───」
「ねぇ、アイリス。あいつをどうしようか?」
「どうするって何をです?」
「おいっ! お前ら人の話を聞けよ!」
俺達の話を邪魔して何か1人で勝手に盛り上がっていたやつが騒いでいる。
「何だよ。えぇーと、誰だっけ?」
「だから名乗っていた最中だろっ!」
盛大に突っ込んでくる。こいつのテンションはうざい。そして何か悪の組織に入っているものとはとうてい見えない。こんなのが悪の組織のボスなのか、いや違うだろ。こいつはただの雑魚に違いない。ならば、ここは何をするか決まっている。つまりは、先手必勝だ。
「風の舞!」
いつも通りに魔法を発動するときは風の舞から発動する。俺の放った風は奴に向かって真っすぐに吹いていく。奴の前に来たとき完全に当たると俺は確信した。しかし奴に当たる直前、あと少しで当たろうとしたときに奴はここからは遠くてわからないがさっきまでのテンションとは違う邪悪な笑みを漏らした気がした。もちろん見えていないから気がしただけだ。だが、その次の瞬間は風は吹き返された。
ドーン
「な、何だと!?」
俺は驚いていた。こいつは、こいつは雑魚じゃないのか。こんな奴にこんな力があるなんて………信じられない。
「どうした。そんなものか。二級魔術師ギンよ」
………こいつ。俺は態度を改める。こいつは相当やりおる。さっきまでのばかなやつとは完全に違う。
「お前の名前をやっぱり知りたい」
俺は尋ねる。一度、無視した以上答えてくれないと思ったがその心配はなかった。
「ようやく聞く気になったか。我はルイ、ルイ=フランツ・レオンだ。よーく名前を覚えておくんだな。そしてこの地下の最高統括者にしてここの創業者だ。つまりはお前が探しているボスとは我のことさ」
「ルイ=フランツ・レオン。どこかで聞いたことのある名前だがどこで聞いたか………あっ!」
俺は突然叫んだ。こいつのことを知っている。俺はどこかでと思っていたが今思い出した。
「お前は、俺と同期のルイじゃないか!」
俺はこいつのことをずっと忘れていた。それもそのはず、こいつは魔術師になってすぐに辞職している。そのとき、本人曰く家庭の都合と話していたがこれが家庭の事情なのか。
「これが家庭の事情か、残念な奴だ」
俺は哀れむ目でルイを見た。
「そんなわけあるか! これはうちが廃業したから興したんだよ。我はこれで世界を征服するんだ! フハハッハハハハ」
「「………」」
俺達は哀れむ目で見ていた。
「何だよ、何だよその眼は! 我を馬鹿にするのか!」
「ばかにするも何もばかそのものじゃないか」
俺は思っていたことを言う。それを聞いたルイはいい加減にしろとキレた。俺はその様子を見ていていまだ納得できないものがあった。こいつがボスなのか。何か裏にもっと深い闇が存在しているのではないか。しかし、まずはこいつを倒さない限り真実には近づけない。俺は、アイリスには少し下がってもらい戦う態勢を取った。
「いい加減に我を馬鹿にしやがって! 我はこれでも魔法が使えるんだぞ! サンダーボルト」
ルイは魔法を放つ。
サンダーボルト。雷属性の魔法だ。俺は、自分の上に突然現れた雨雲から放たれた雷を間一髪で避ける。
「ちっ」
しかし、うまく避けきることができず肩にかすり血が少し流れていた。
「ギン!」
少し離れた場所からアイリスが叫んでいる。
「大丈夫だ。アイリスは自分が安全だと思う位置にいてくれ」
「はい」
アイリスは俺の言葉に返事をしているがその声は不満が詰まっているように感じられた。俺1人を戦わせていることが納得いかないのだろう。助けられた上にまた助けられることがとても悔しいに違いない。だが、これは魔法を使う者同士の戦い。巻き込むわけにはいかない。
「風の舞!」
ここはお得意のこの魔法でルイの対応を見ることとした。
ルイに向かって風は一直線上に吹いていく。あと、少し。あと、少しでルイに直撃しようとしたときに突然ルイから激しい光が発した。
「な、何だ?」
何が起こったのかわからない。ルイが突然光った。それだけしかわからなかった。俺だけではなく遠くからこの戦いを見守っていたアイリスも同じであった。
「ギ、ン。何があったの?」
小さい声であったがアイリスの口を読んだらそう言っていた。
「わからない」
俺はそう返事をしておいた。
まもなく、光り輝いていたルイのあたりは光が弱くなってルイの姿が現れてきた。
「何だあれは!?」
俺達は信じられないようなものを見ていた。そこにいたのは………。
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