第39話 奴隷屋①
階段を下りた先に俺を待ち構えていたもの。それは広大な空間であった。
「なんだ、ここは?」
広大な地下空間。その中にたくさんのお店が立ち並んでいた。こんな空間がこの町の地下に存在するとはすごいものだ。ある意味感心してしまうがいかんせん俺の仕事はここにいる闇商人を捕えることだ。ただ、ここにいるのは全部闇商人だと思うがもしものことがあるかも知れないので一応は地下街を探索しておこう。そう思い、1歩また1歩と町のほうへ足を進めた。
「おっ、お兄さん。見知らぬ顔だね。新人か」
いきなり声をかけられてしまった。俺は正体がばれないようにてきとうに話を合わせることとした。
「はい、なんかトイレで怒り狂っていたらここにたどり着いてしまって、ここはどういう場所なのですか?」
本当は知っているが俺は念のための確認として尋ねた。少しぼろい服を着ている兄ちゃんはなんだなんだ偶然来ちゃったのかと言ってから話し始めた。
「ここは闇市場というんだ。闇と言っているからわかるようにこの国のほうでは売ってはいけないとされている薬、武器、奴隷その他もろもろが売られているんだ。兄ちゃんもここを知った以上はここの虜になっちゃうぞ」
そう言って兄ちゃんは去っていった。
だが、これでここが闇商人の集まる市場だという確固たる証拠を手に入れた。だが、一応は町を検分する。
薬屋。
「………」
「いらっしゃーい、どうした兄ちゃんえらい顔して」
薬屋に入るといかにも怪しい薬がたくさん置いてあってびっくりして言葉にも出せなかった。しかも、全部ありえないほど高額な値段だ。置いてあったものは完全にドーピングアイテム、覚せい剤などの麻薬、危険指定されている魔草、さらには口では言えないエロイ薬までが置いてあった。
俺は、声をかけられたが黙って退出する。そして、次のお店へと向かう。
武器屋。
「………」
「いらっしゃーい、あれ? どうした兄ちゃんそんなえらい顔しちゃって」
またしても無言になってしまった。別に警戒をしているわけではない。そこの武器屋にあった武器を見て驚いて口が開けなかっただけだ。
法律違反の長さの警棒、同じく拳銃、魔法無効化シリーズとして発売したが使用者が死に至ることが発覚して発売禁止になった品々、これまた触れただけで相手を殺してしまうといわれる恐怖の鎧、どこを守っているのかわからないエロイ鎧などなど。というか何でこんなにエロイ物が置いてあるんだよ。と、心の中で突っ込んだのはたぶん俺が初めてだろう。
ともかく、次の店へと向かった。
カフェ。
「………」
「いらっしゃーい、どうした兄ちゃん。注文決まった?」
店員の女性(服装がなぜかメイド服)が声をかけてくるがまたまたびっくりして口が開けなかった。俺がびっくりしているのはメイド服ではない。確かにカフェの中にカフェがあるところで突っ込みたいのはやまやまだがそれよりもメニューに驚きがいっていた。
「ね、値段がぼったくり………」
なぜだか通常価格の3倍はあるぞ。レモンソーダが1杯800ジュエルとかどういう神経しているんだよ。ただ、まだレモンソーダぐらいならいいが他のメニューをよく見るとなんだろう。ここって人間界だよね? と疑いたくもなるものが書いてある。
から揚げ(人肉)、かえるのてんぷら、生き血ジュース、人間の汗水、人肉入り肉まんなどなど。
俺は何もすることなく店から出て行った。あれって冗談だよな? という疑問を残した状態であった。
奴隷屋。
「こ、これは」
さすがにここは無言ではなくつい言葉を出してしまった。俺は、衝撃の衝撃の場面を目撃してしまった。
「しっ、今いいところなんだから」
隣りにいたごついやくざっぽい兄ちゃんに怒鳴られた。ただ、すぐに俺に関心をなくして前を正面に集中する。正確に言うと正面で行われているショーにだ。
「ええー、ではみなさん。今日の奴隷を紹介します」
司会者らしき人がマイクを片手に話し始める。その内容はおぞましいものだ。
「では、今日の奴隷は……ひゃほー。これはまた可愛い少女です。さぁーてお値段はどれくらいがいいですかなヒヒ」
怪しい声だ。そしていやらしい。卑劣な野郎。こいつに対して抱いた印象はそのような負の印象であった。
「10万!」
「20万」
俺の周囲からそのようなでかい声が聞こえる。だが、そんなのはどうでもよかった。俺にとって最も注視しなければいけないもの。それは、奴隷として売られている少女だ。服は着せてもらえず大事な部分は布で隠されているだけだ。と、なると周りの男の性的な対象にもなるわけでもありいやらしい目で見ている奴までいる。
かわいそうに普通の生活を送っていただけなのかもしれないのに年齢は俺と同じ年ぐらいの子だ。なのにどうして、奴隷にされてしまったのだろうか。俺は哀れで見たくはない。ただ、同時に絶対に助けてやりたいと思った。ここさえ、壊してしまえばすべてが終わる。
「40万」
「100万!」
少女の値段はどんどん上がっていく。それに伴い場の雰囲気もヒートアップしていく。少女の顔は真っ赤だ。それは裸を男にみられている恥ずかしさからくるもの、怒りからくるもの、絶望しているものたくさんの少なくとも負の感情でできているものだ。
「うう」
少女の目は涙が見えた。それは誰かに助けを求めているようなものだった。
そのとき俺の中の何かはぶちぎれてもうこの感情を抑えることができなくなっていた。
ここにいる卑劣な奴ら全員を殺す。
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