第38話 カフェ・ベリー



 カフェ・ベリー



 それが俺達が向かった先のお店の名前だ。


 バーカス通りの一番の大通りのちょうど中央に位置している。外見からは誰がどう見てもただのカフェで憩いの場所だと思わせられる。外にも椅子やテーブルが並んでおりカップルなどがいちゃいちゃしている。いちゃいちゃしている。いや、2回も行ったのは別に嫉妬しているわけではないぞ。


 ごほん。ともかく、ただのカフェにしか見えないこのお店は実は闇商人と関係するお店なのである。こういうお店には裏があるというのはこういうことなのかと思い知らされた。


レイは早く中に入りましょうよと促してくる。ただ、その眼はどう見ても闇商人を探すのではなくカフェ事態に興味があり何か食べたい、飲みたいといった欲求に負けているように見えた。


 ただ、同時にこのとき思ったことがあったここでレイに何かをおごってあげて俺から目を離せさえすれば危険な目には合わせずに済む。これはいい手だ。レイには悪いがこれもレイのため、俺はレイに対して提案した。



 「レイ。何か食べたいか?」



 俺は、ごく普通に聞いた。レイは食欲に負けているのか何も考えていなかったみたいで即答した。



 「はいっ」



 威勢のいい返事だった。



 「じゃあ、カフェに入るか」



 2人でカフェの中に入った。俺はレイに1000ジュエル札を1枚渡して好きなものを頼んでいいぞと言っておいた。



 「ギンさんはどうするのですか?」



 レイは質問してきたが、



 「俺は腹の調子が悪いからトイレにでも言っておくよ」



 と言っておいた。レイの顔は真っ赤でそれ以上は言わなかった。このとき俺はトイレの話はやはり女子には失礼だったかと後々反省することにした。



 「さて、トイレに行くといったがどうしたんものか」



 トイレに行くといって出たのはいいが闇商人のアジトといわれるカフェでもやっぱり普通のカフェでもありあまり広くない。これが秘密基地ぐらいの大きさでもあってくれればいいものなのに残念だ。



 「まあ、まずはトイレにでも言って考えるか」



 トイレはすぐ近くにあったのでとりえず便器にでも座って考え事をしてみようと思い至った。


 便器に座るといろいろ考え始めた。



 こういうアジトというのはやはり地下というのが定番だとするとどこかに秘密のボタンでもありアジトへの道が出現するのではないのだろうか。もしあるとしたらカウンターあたりか。いや、どこかのテーブルか。そもそもボタンじゃないかもしれない。


 考えれば考えるほど正解から遠のいていく気がする。そもそも正解があるのかということまで考え付いてしまう。くそくそくそ。何が答えなんだよ。誰か教えてくれよ。最悪だ。



 いつの間にか八つ当たりにキレていた。しかたない、答えが見つからなきゃ誰でもこうなるだろう。


 俺は、ものにあたってトイレの中のボタンのどれかにてきとうに当たった。そう、てきとうに当たった。  



 ドドドドドド



 急に何か大きな機械音が聞こえてきた。この音はどうやら歯車が回る音だ。だが、歯車なんかトイレにあるはずがない。じゃあ、どこから聞こえてくるんだ。疑問に思った。


 だが、疑問の正体はすぐにわかることとなった。音自体に気を取られていた俺は気づかなかった。目の前の現象のことが、



 「こ、これはいったい!?」



 俺が目の当たりにしたものはトイレの床が突然2つに分かれて中から地下へと通じる階段が出現したのだ。



 「地下への階段か。………なんかよくある展開だな」



 俺はなぜだか残念に思ってしまったがこれで闇商人を捕えることができる。そう思い階段を下りて行った。

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