第30話 手紙



 翌朝。



 目覚めは最高に良かった。ベッドから出た俺は、窓の近くまで歩いていき閉まりきった部屋のカーテンをおもいっきり開く。



 「うっ。眩しい」



 カーテンを開けると太陽の光が照りついてきた。外は雲一つなく天気は最高に良かった。これから気分新たな旅をするのには幸先が良い。これがもし雨だったら俺のテンションはガタ落ちといってもいいだろう。ちなみに雨の日に出発した任務では毎回トラウマを負っているのでもう二度としないようにしている。



 コンコン



 部屋の扉をたたく音がした。俺が返事をすると、扉はゆっくりと開いた。



 「おはよう、ピーチェ」



 「おはようございます。ギンさん」



 入ってきたのはピーチェだった。服装は昨日とは違いきちんとしている。俺が服をじっくり見ていることに気が付いたピーチェは顔を赤くして謝ってきた。



 「あの、昨日は本当にすいませんでした」



 涙目であった。流石に俺は泣かれたら困るのですぐさま許す。



 「大丈夫だ、俺は何も気にしていないから」



 「本当ですか?」



 「ああ、本当だ」



 俺の言葉を聞いたピーチェは泣くのをやめ笑顔になる。やっぱりピーチェには笑顔が似合うなと心の奥では考えていた。この時、部屋の扉の方から何か音がした。音の源はおそらくと言っても確実にレイだろう。



 「レイ」



 俺が名前を呼ぶ。その言葉を聞いた何かはというかレイは動揺したようでバタバタ部屋の外では慌てるような音がしたがしばらくするとその音は止み扉が開きその何かは部屋の中に入ってきた。もちろん入ってきたのその何かとはレイのことだ。



 「あ、あの私もすいませんでした」



 レイも謝ってくる。もちろん俺は許した。何も怒ってはいなかった。まあ、驚いたことと言えば驚いたことであったが。



 「とりあえず、支度するぞ」



 俺達は支度することとした。その間にレイには朝食を作ってもらっていた。持ち物はここに来るまでもともと持っていた物つまりはテントや寝袋などは俺とピーチェの分しかないのでこのホテルに何かないか探すこととなった。人数が増えるとにぎやかになるというがその分荷物も増える。いいこともあれば悪いこともあるものだ。



 「ご飯できました」



 レイから朝食ができたと連絡をもらった。こっちもちょうど準備が終わったのでジャストタイミングだ。



 「いただきます」



 俺は早速レイの作った朝食を食べる。コッペパンとサラダというザ・朝食という内容だったが俺には満足いく光景だ。レイの作ったサラダはおいしかった。実は、まずかったらどうしようとか思っていたがそのようなことがなくてよかった。


 ピーチェも満足しているようだ。この2人の仲は最初は悪いように思えたがだいぶ打ち解けあっている。これにはほっとした。



 朝食を食べ終えた俺達はホテルを出て町長に会いに行った。何だかんだで昨日のパーティのお礼をしていなかったからな。きちんとお礼をしておかないとと思って役場に向かっていった。



 役場。



 役場の入り口にピーチェとレイの2人を待たせておいて俺1人中に入っていく。



「やあ、ギン殿。おはようございます」



 中に入るとすぐに町長が笑顔で迎えてくれた。俺は昨日から思っていたことがあるがこの町長は案外子供じみていた。都市はもう50後半のはずなのに無邪気さが残っている。



 「町長ありがとうございました。エイジアにもう向かいたいということを伝えに来ました。昨日のパーティも感謝しています」



 お辞儀する。



 「いやいや、やめてくださいよ。むしろ感謝したいの私たちなのですから本当に助けられた身として」



 町長もお辞儀する。お互いがぺこぺこしあっていた。



 「では、これで失礼します」



 俺が話を切り上げて部屋から出て行こうとする。が最後に町長は俺を引き留めた。



 「忘れるところだった。ギン殿1つ伝えることがありました」



 「伝えること?」



 何を伝えるのか話が気になった。



 「いや、伝えることと言いますか渡すものがあるということです」



 そう言って町長は手紙を渡してきた。中身を確認してくださいと言われ早速手紙を開封する。手紙を書いたのはエードだった。



 ギンへ



 今回助けてくれてありがとう。


 私自身では何もできなかっただろう。ゾームを倒したのはお前だ。もう、私なんかをとっくに超えてお前の方が強いんだな。私は安心したよ。お前はもっと強くなれる。だからこそ、伝えておきたいことがある。


 盗賊団不死の宝石に政府の命令で潜入して分かったことを何個かお前にだけ伝えておく。


 まず、盗賊団不死の宝石はあるもっと深い闇の組織と取引をしようとしていた。この組織については俺もこれから極秘で調査をしていたいと思うがこの組織はもしかしたらこの国自体操っているかもしれない。


 次に、この組織はお前の親父の失踪と関係があるかもしれないということだ。まだ、確信を得られていないがその可能性が高いということだけ覚えておいてくれ。


 最後に、お前にこのことを伝えてしまった時点でもう遅いと思うが警告をしておく。この組織にはかかわるな。お前の親父の話をした後で遅いと思う。でも、関わらないでほしい。これは親友としての警告だ。お前には一応言っておいたぞ。もしも、関わるなら自己責任だからな。


 これから私は、ミーサと共に各地を旅しようと思う。国の命令と言っても半ば罪人だ。今さら戻ることができない。いや、戻らせてはくれない。だから最後にお前と再会できてうれしかったよ。できれば同期のみんなには私のことは伝えないでくれ。後は特に国には。



 最後にギン。ありがとう。



                         エード・クロニクル



 「………」



 手紙を読み終えた。町長にこの手紙をいつもらったのか聞いたがもう昨日の夜のことだと言われた。もう、追いかけることができないか。まったく、せこいよあいつ。俺は不思議と微笑んでいた。


 ただ、またどこかで会えるような気はした。あいつは俺ともう会えないと思っているみたいだけれども俺はそう思った。



 町長と別れて俺は役場を出た。ピーチェとレイの2人が笑顔で俺を待っていた。



 「じゃあ、行くか」



 「「はいっ!」」



 2人して元気に返事をする。俺達は歩き出す。



 ………エード。関わるななんて言われても親父の話を出した時点でどうなるかわかっているくせに。自己責任か。最初から自己責任のつもりだ。俺は、親父の真相を知る組織を見つけ出すことを密かに決意したのであった。

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