第31話 ダムプ湿原
「風の舞っ!」
はぁぁぁ! 俺は魔法を使っていた。毎度おなじみの『風の舞』という魔法だ。俺が使う魔法は大体はこれだ。さて、何で俺は魔法を使っているのかというと。
「ギンさーん。早くしないと取れませんよ」
「そうですよ。ピーチェの言うとおりですよ」
俺の背後から2人が俺を応援しているというか急かしている。あの2人は俺が知らないうちに仲良くなっていて呼び捨てするまで中は発展していた。しかも、レイは人見知りが少なくなってきた。怯えるようなことが無くなっていた。これは俺としてもうれしいことだ。
「早く、早く」
急かしている。俺は何を急かされているのかというと。
「僕の帽子ー」
たまたま通りかかった親子が帽子が木の枝に引っかかって困っていたため助けることとなった。まあ、これも魔術師の仕事なのだが………何で俺だけがこんな目に合わないといけないんだ。
話は少しさかのぼるが実はこのようなことが町を出てからすでに13回起こっている。13回、13回だぞ。おかしいと思わないか? 何でこんなに帽子が木の枝にーとか、風船が飛ばされたーとか頻繁に発生するんだ。なんか悪意を感じる。ピーチェとレイはそのたびに俺に何かするように求めてくる。確かに魔術師の仕事だけどっ! もう疲れた。早く、ピーチェ達にも魔法を教えようと決意した日であった。
「ありがとー。お兄さん」
「どうもありがとうございました」
無事に帽子をとることができた俺は帽子を男の子に返してあげて別れを告げた。
ダムプ湿原
それが今俺達が進んでいる場所の名前だ。非常に湿った平原である。しかし、モンスターの出現はここ5年は確認されていないため一般の人たちの通り道ともなっている。俺達も、平和なこの道をエイジアに行くには遠回りだが安全第一ということでわざわざ選んだ。
「空気悪いです」
レイが正直に感想を述べてくる。確かに、ここは湿っていて空気が気持ち悪いほどいやだ。
「早く抜けよう」
ピーチェもレイに賛同してきて俺に対して助言してくる。俺としてもここには用があるわけでもないのでさっさと抜けようと歩くペースを上げていく。
「さあ、急ごう」
簡潔に言う。このあと、モンスターがいないのは本当だったみたいで何事もなく普通にダムプ湿原を通り過ぎた。俺個人としては、そのことは一応安心したと言えばしたのだがなんかこうもあっさりしているとかえって落ち着くことができないのである。
ただ、それは杞憂であった。俺達は次の町シュームにたどり着いた。
しかし、この後俺達はシュームでデカい案件に関わることになるのはこの時はまだ知らなかった。
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