第25話 ゾーム戦後
「ミーサ、ミーサ」
「うう」
エードが、ミーサという女子の名前を呼んでいる。
アジトを出た俺達がまずしたことといえば重傷であったミーサの治療であった。囚われていた町の人たちが医者を連れてきてくれたこともあり治療はスムーズに進んだ。そのおかげで、ミーサは死に至ることなく無事に意識を取り戻した。
「大丈夫か?」
ミーサはようやく目を覚ましたらしくエードが心配そうに声をかけている。………。俺は、2人の邪魔をしないようにその場を去った。
「ギンさん」
「うん? どうした、ピーチェ」
2人から離れた俺は前方からやってきたピーチェに呼び止められた。ピーチェはアジトの外でずっとおとなしく見守ってくれたそうだ。そして、町の人たちが脱出してきたのを見ると一緒にけが人の手当てなどをアジトの外の安全であった場所でしてくれていた。そのことを町の人から聞いてうれしく思った。
「いや、ギンさんって意外と気遣いができたんですね」
意外とって。ちょっと心外だな。
「まあ、俺にだってそれぐらいのことはできるよ。あの2人の雰囲気を邪魔してはいけないことぐらいわかるよ」
「ふーん」
ピーチェがその言葉を聞いたら逆に不機嫌になった。何でだ。しかも、地味に足を踏まれていたい、痛い。
「痛い、痛い。とりあえず、足を踏むのはやめてくれないか」
本当に地味に痛い。涙目になった状態でピーチェに頼むと「わかりました」と言って足を踏むのをやめてくれた。
やれやれ、助かったぜ。ここだけの話、実は見た目によらずピーチェの力はとてつもなく強い。………誤って本人に言ったら絶対に殺されるかもしれない。
「ギンさん。何か失礼なことを考えていませんか?」
ギクッ。
「べ、別に何も考えていませんよ。あは、あはははは」
乾いた笑いをして必死にごまかす。周りから見ればバレバレかもしれないが、笑い続ける。ピーチェは何か言いたそうであったがそれ以上は首を突っ込むようなことはしなかった。
「何でもないならいいです」
ふぅ~。それにしても、俺が考えていることってなんでいつもばれるんだろう。………考えても仕方ないか。偶然だ、偶然。次は、ばれないだろう。
俺は、ピーチェと共に町の人の元に向かった。町の人たちの代表である方の話によると、
「一回、町に戻ってくれませんか。あなた方に感謝したいのです」
という内容だった。俺と、ピーチェの2人は最初は首を横に振ったが町の人たちはぜひともと言って1歩も引いてくれなかったのでついには折れることとなった。
エードとミーサの2人も町に来ることとなった。ただ、この2人はパーティーに参加するつもりはないと言っていた。そもそも、ミーサの体調は万全ではなく参加できる体ではないのだ。それに伴って、エードも参加しないらしい。まあ、何で来ないのかというのは軟だな。なんだかんだ言ってあの2人はお似合いだな。ただ俺達は、何も触れない方が賢明だな。
町一番の酒場にて
「それでは、盗賊団から解放されたことを祝って、かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
町一番と言われているらしい酒場にて祝賀パーティーが開かれた。
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