第13話 盗賊団
俺達は、北に向かって歩いた。北に位置する森を越える。(ちなみにこの森では相当強いモンスターが出現したり、川に落ちたりいろんなことがあった)その奥深い森の先にあったのが竜がいると言われている谷であり、そこに盗賊団がアジトを構える洞窟があるらしい。ただ、森を越えてそこにたどり着いた俺達は唖然とする。
「ギ、ギンさんこれは?」
「これは、何だ?」
俺達が目にしたものは盗賊団によってこき使われている大勢の人たちだった。幼い女の子、男の子から老人まで老若男女さまざまな人たちが使役されていた。あっ! 今おばあさんが転んだ。俺が助けに行こうと動こうとしたら、そこに運悪く盗賊団の一員が出てきて動くことができなかった。しかも、そいつは転んで蹲っているおばあさんを蹴っ飛ばした。
………ビシン。俺の中のねじのどこかが外れた気がした。俺の感情は抑えきれなくなっていた。
「ギンさん?」
「ピーチェ。ここで隠れていてくれ。大丈夫。すぐに終わらせるから」
そう言い放ち、俺は盗賊団がいる谷に向かっておばあさんの元へ走り出した。
俺が、近づいていることに気が付いた盗賊団の1人が声を上げてきた。
「曲者が現れたぞっ!」
カンカンカン。鐘がなり始めた。これで俺の存在は伝わっただろう。しかし、これでやることは変わらない。レイを助けること。そして、ここにいる盗賊を1人残らず、ぶっ殺す。
「曲者めっ! 死ねぇぇぇぇぇ」
盗賊が俺に向かって攻撃してくる。この付近には洞窟がないということはまだ、この愛との入口なんだろう。つまり、今なら殺れる。
短刀を俺に向けてきた盗賊はそのまま勢いを押し殺さずまっすぐに俺の腹を狙ってきた。俺は、その盗賊に一言放つ。
「裁きの炎」
裁きの炎。名前の通り、裁きの炎だ。この技は、珍しい魔法である。何といっても、この聖なる色、光で燃えている炎は罪人しか燃やさないのだ。罪がないものには一切の被害がない。そのためよく、裁判や死刑執行で使われる魔法だ。
さぁ、盗賊よ。お前はこれに耐えるほどの聖者だったか。俺は、盗賊を見た。盗賊は、燃えていた。
「あっつい、あづいよ~」
もがいている。所詮お前はその程度の者だったということだ。そして、すぐにその体は消滅した。まずは1人。ただ、ここのアジトにはどれぐらいの盗賊がいるかわからない。そんなことは、どうでもいいからレイを探さないと。
盗賊団不死の宝石のアジト最深部
そこには5人の盗賊がいた。中央最深部の玉座に座る大男。彼こそがこの盗賊団不死の宝石のボス──ゾームであった。ゾームは、曲者が侵入してきたという知らせを受けている。しかし、彼にはそんなこと些細なことに過ぎなかったのだ。何といってもこの不死の宝石は構成員250人というこの近辺の盗賊団の中では群を抜いて最大規模なのだ。だから、曲者が入ったところでどうとでもなると思っていた。だが、事態は悪化していく。敵はアジトをたった1人で制圧していると聞いたからだ。どんな敵なのか知らない彼は最初はただの町民がここでこき使わしている元町民を解放しに来たのだと思った。だから、彼には誤算だった。その敵に。ギンという名の魔術師が攻めていることが。
「ボス。どうしますか?」
「「「ボスッ」」」
その声でゾームはハッとさせられる。今、彼の名を呼んだ4人。彼らは、盗賊団不死の宝石の中でもトップ─幹部クラスの者たちだ。部下や町民からは不死の四天王と呼ばれている。
「ボス~。あんな奴殺しちゃいましょうよ~」
チャライ感じにゾームに話しかけたのは四天王の1人である北王ゲンだ。見た目は、都会によくいる若者だがその内面はとても醜悪である。
「いいぜ良いぜ。そういうことなら俺様にやらせろ」
ゲンの意見に同調したのは同じく四天王の1人である東王セイヤだ。見た目はゲンとは違い頭は剃髪をしどこかの高僧に一見見えるが、その内面はゲン以上に醜悪であり盗賊というよりも連続殺人犯ともいえる存在だ。
「まったく。あなた達はそれだからダメなのですね。私ならもっといい方法がありますのに」
ゲン、セイヤの意見に反論したのが四天王の紅一点西王ミーサだ。外見は、相当の美女である。しかし、その外見を利用して今までたくさんの者を騙してきたこれまた盗賊団の逸材だ。
「何だと、このビッチが!」
「なんだと、私はビッチじゃない! ただ、男ども何て外見だけで意のままなだけだ」
「ああ、証拠でも見せてみろよ、証拠でも」
「いいわよっ! そこまで言うなら見せてやろうじゃない!」
セイヤとミーサの2人は言い争っていた。これは、いつものことなのでゲンもボスも傍観している。ただ、1人もう1人の四天王である南王エードを除いて。
「お前ら、いい加減にしろ。ミーサは女なんだから少しは品を考えなさい。盗賊団の中のあなたのファンが悲しみますよ。ゲンも火に油を注がないようにしなさい」
南王エード。不死の四天王の中ではリーダー格であり、ボスゾームからの信頼が最も厚いことで盗賊団の中では知られている。その性格は、盗賊団の一員なのかと疑うほど冷静沈着、真面目などといった評価を持つ。
「エード。どうするんだ?」
ボスゾーマはエードに答えを求める。エードは、少しも考えることなく答える。
「私がやりましょう」
そう言うとエードはギンのいる方向に歩いて行った。
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