第6話 ピーチェ
あれから1か月後。
俺は、無事にリヴァを討伐することに成功していた。ただ、リヴアはとても強くしばらくの間体を癒さなければならないほどダメージを受けた。なので、すぐに自分の家に帰るのをあきらめて今はリヴァを征伐した町アフーカにある小さな宿で休ませてもらっている。
「ギンさーん。少し降りてきてくれませんか?」
俺が、2階の自分の泊まっている部屋で休んでいると下の階から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。おそらくは、この宿の主人の一人娘のピーチェだろう。ピーチェは俺と同じ年で現在魔術師になろうと修行している。俺がこの宿で泊まっていられるのもピーチェの修行を見ているからだという面が大きい。そのようなことを考えていると。
「ギンさん。遅いよ。早く修行に行こうよ、今なら父さんはいないんだし」
そう言って俺の泊まっている部屋に入ってきた。父さんがいないんだしという意味は、ピーチェの父であるここのご主人は一人娘が魔術師になるのに反対であるからである。なので、ばれないようにこっそり修行を毎日繰り返している。
「ああ、すまない。それじゃ、行くか」
「うんっ!」
驚くほど元気な声でピーチェは返事をした。
それから、俺達は宿から少し離れた空き地に来ていた。この空き地は修行の場として最適の広さと地形を持っているのでよく使う。そして、今日も使わせてもらう。
「ギンさん。今日もよろしくお願いします」
「ああ、じゃあいくぞ!」
修行といっても実際に戦うわけではない。基本的に戦うみたいなセリフを放っているが、実際は魔法を教えるだけだ。ピーチェは火属性の魔法の才能を持っているので俺の魔法属性は風なので専門外だができる限りのことは教えてあげている。
「火の粉!」
ピーチェはそう技名を言うと、小さな火が空を舞った。火の粉は火属性の基本的な技の一つであり技ランクは1に値する。つまりは、強くない。だが、魔術師になるものは技ランク1の魔法から使えるように練習していく。技ランクとは読んで字のごとく技の習得の難しさを表すものである。ただ、中にはランク?と言われるような幻の魔法や禁術も存在する。
「どうですか?」
どうといわれてもな。心の中で俺は思った。ただ、口にはださない。これでもピーチェは謙虚であるからだ。
「そろそろ実力が上がってきたから技ランク2にいってもいいんじゃないか?」
俺は、素直に感想を言うと、ピーチェはうれしそうに言った。
「ありがとうございます。ぜひ私に教えてください」
「よし、次の技は難しいからな。覚悟しておけよ」
そう言って修行を再開した。俺の気のせいかピーチェの顔は赤くなっていた気がした。しかし、それは新しい魔法を学ぶことができて興奮しているものだと思っていた。
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