第2話 征伐へ



 ジリリリリ。うるさい目覚まし時計が鳴った。



 「うぅん」



 長い長い悪夢から今日も目覚めた。今日はあれからちょうど5年の日だ。俺は親父とは違い才能がないので、まだ二級魔術師の資格を持っているだけであった。しかし、いつかは親父みたいに………。



 「親父………。一体今どこで何をしているんだよ」



 毎日、目覚めた後に独り言を呟く。一人暮らしなので誰も聞いていないのは承知の上だが、これは自分に対しての自問、問いかけなのである。そのあとは特に面白いことはなく着替えをして正装になり、一人分の朝食を作り食べ仕事へと向かう。



 俺の仕事は、政府の魔法省征伐局という行政機関の役人である。魔法省は、この国の最高行政機関の一つでありそういった面ではキャリアと呼ばれる。しかし、親父はそれ以上の存在だ。ちなみに征伐局の仕事内容は読んで字のごとくモンスターの征伐である。それ以外もこれ以上もない。シンプルな仕事だけだ。だが、モンスターは人が多く住む町の近くまで来ることもある。危険な生物のため俺たちの存在は非常に重要なのである。現に、かつてこの国ではモンスターの襲撃によってある大都市が一夜にして崩壊した。あの時の惨劇を繰り返すことがないように征伐局が開局された。



 今日は、昨日の帰りに引き受けたモンスターの征伐に行くことになっている。


 モンスター名は『リヴァ』。どこか遠くの国で伝わっているリヴァイアサンという海竜にとても似た生体というか、そのままであるみたいだ。昨日見たこれらの情報が載っていた資料から『リヴァ』は海に生息するモンスターだ。このせいで漁師が海に出たくても出られないらしい。現に、無理して漁に出た漁師さんが重傷を負ったという情報が入っている。


 だが、俺の住んでいる町「エイジア」は内陸の南西部に位置しているため『リヴァ』が現れる海辺の町「アフーカ」にまで移動しなければならない。幸い「アフーカ」はここから南に3日の場所に位置しているので歩いていける。俺は、乗り物が嫌いなので馬車には最低限乗らないことにしている。しかし、当然歩いていけばその分目的地までの所要時間がかかってしまう。単純に馬車の2倍はかかるだろう。しかし、それはそれで楽しいものだ。途中に宿として寄る町や村でたくさんの人と触れ合い友好関係を築けるのはとってもいいものだ。



 今日は、もう「エイジア」を出てから約6時間が経ったのですでに日は暮れようとしていた。夕暮れの一人旅は寂しい。非常にさみしい。どこか下宿する場所を探していたが、近くに村がなかったので今日はこの洞窟で野宿することにした。

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