第37話

 女の人はダルそうに体を起こすと博くんの顔を見た。


「もしかして、博?」


 博くんは、コクリと頷きました。


「髪の毛どうしたの?

 病院は??」


「薬の副作用で全部抜けちゃった……」


「……」


「もう、出てきたの?」


 女の人は、そう言うと煙草に火をつけた。


「お母さんに会いに来たんだ」


 博くんは、少し照れながら言った。


「病院に帰りなさい」


 博くんのママは、冷たく言った。


「今日、手術があって……」


「いいから帰りなさい!」


「……」


 博くんは、悔しそうに歯を食いしばりました。


「にょ?」


「……突然来てごめんなさい」


「私は、貴方を捨てたの……

 だから、私は貴方を孤児院に預けた

 先生との約束で、月に一回は会いに行っているけど……

 本当は嫌なの……

 アンタに、それわかる?」


「……」


 博くんは、何も答えない。

 博くんのママは、カッターシャツを着ると財布からお札を取り出した。


「これ、あげるから、これで帰りなさい」


 渡されたのは全部で3万円。

 それを博くんママは、博くんの手に無理やり握らせた。


 博くんは、悔しそうにうなずくと私の手を握った。


「帰るぞ、瞳」


 私は、コクリと頷いた。

 博くんのママは、冷たい声で言った。


「またね」


 博くんは、何も答えなかった。

 博くんは、くしゃくしゃのお札をさらに握りつぶし。

 そして涙を堪えているのが私にもわかった。


「にょにょにょ……」


『泣いても良いよ』


 そう言いたかったけど……

 言葉に表す事が出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る