第33話

 私に、初めて友達が出来た。

 それが、嬉しかった。

 トンネルをつくろう

 私が出した提案に、港ちゃんはこくりと頷いた。


 私たちは、まず砂山を作った。

 大きな大きな砂山を作り、そしてその山に手を入れた。


 ずりずりずりずり


 少し。

 また少しと、穴を掘り進んでいく。

 私の手が港ちゃんの手に触れる。

 あったかい。

 港ちゃんはニッコリと笑った。

 砂場に港ちゃんは文字を書く


 かんせい


 私は、ニッコリと笑い返し手を握った。

 楽しかった。

 穴が空いたトンネルを覗くと港ちゃんの顔が見えた。


 嬉しかった。


 ママが死んでから初めて誰かに触れた。

 ママが死んでから初めて笑えた。


 そんな気がした。

 港ちゃんの手の鼓動が私の鼓動と重なる。

 胸の奥がドキドキと響く。


 そして、私が少し動いた途端。

 そのトンネルは静かに壊れた。


 少し泣きそうになった。


 だけど、港ちゃんは、クスクスと笑っていた。

 だから、私もクスクスと笑うことが出来た。


 何が楽しいのだろう?

 何が面白いのだろう?


 なにもわからないけど私達はクスクスと笑った。


 その日から私達は常に一緒に居た。

 私と、港ちゃん、そして時々、博くん。


 博くんとは、病院と孤児院を行ったり来たりしているので、滅多に遊べなかったけど、港ちゃんとはよく遊んだ。


 そんなある日。

 博君が、孤児院に来なくなった。

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