第34話

 空は青く。

 海は青い。


 でも、いつかは赤くなるんだ。

 そんな事、考えた事もなかった。


 私は、先生に博くんの事を尋ねた。


「にょにょにょにょにょ」


 しかし、先生は困った顔をして苦笑いを浮かべた。

 港ちゃんも私の傍にやって来た。

 港ちゃんは、じっと先生の顔を見つめて、博くんの事を聞いていた。

 私は、目を見たらわかるけど、先生にはわからなかったのか、今度は困った顔をした。

 私は、考えた。

 どうしたら、先生に伝わるかな?


 私たちは、一生懸命頭を悩ませた。

 そして、私は思いついた。

 文字で伝えよう。

 私は、紙と鉛筆を取り出し、文字を書いた。


「ひろしくんは?」


 先生は、ゆっくりと私の頭を撫でて言いました。


「博君はね、今、病院で入院しているんだー

 瞳ちゃんと港ちゃんもお見舞いに行く?」


 私たちは、コクリと頷いた。

 私たちは、先生に手を引かれ大きな病院に向かった。


 私は、この病院を知っている。

 ママが死んだ時に来た病院だ。


 505号室。


 そこに博君が居た。

 だけど、少し様子が変だ。


 髪の毛が無かった。


「にょにょにょにょにょにょにょ?」


 私はびっくりした。


『どうしたの?』


 って聞きたかった。

 だけど、言葉にならない。


 博くんは、照れくさそうに笑いながら言った。


「髪の毛全部、抜けちゃった」


 私は、ゆっくりと博くんの手を握った。


「どうしたんだよ?」


 私でも、どうしてかはわからない……


 だけど、そうしないと、不安で不安で仕方が無かった。


 今、握りしめておかないと、博君がどこかへ消えてしまいそうで怖かった。


 気づいた時……

 私は、ボロボロと涙を流していた。

 何故だかわからないけど……

 涙が流れた。


「どうしたんだよ?」


 博くんが、そう言うと笑った。

 港ちゃんは、私の頭をいい子、いい子してくれた。


「にょにょにょにょ……」


 言葉が出ない、何を言ったらいいのか解らない……

 ただ、私は、『にょ』しか言えなかった。

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