第87話海洋牧場

 もちろん湖沼だけではなく、海も活用した。

 海洋牧場なのだが、最初は陸地近くで海水を汲み上げて、陸上施設で養殖した。

 伊勢海老や雲丹・鮑となると、その方が養殖しやすかったのだ。

 もっとも、海水のPH調整が難しく、一つ間違うと簡単に全滅してしまう。

 それでも、廃棄野菜(キャベツなど)で養殖出来るので、品質さえ高ければ大きな利益が出る。


 超円高時代の日本では、安全安全で旨味の濃い野菜しか、高い国産品は売れない。

 安価な野菜は、全て輸入で賄っている。

 貿易収支の問題もあり、安価な食料品くらいは輸入しなければいけないのだ。

 人口減少と自給自足を目指す俺には、忸怩たる現状だが、仕方がない。

 何にしても、高価に輸出出来る雲丹と鮑が、世界的に大人気になったのは有り難い。


 当然だが、日本人が大好きで、世界的にも広まったクロマグロの養殖にも力を入れてる。

 だがこれは、湾内の生簀を使った養殖になる。

 湾内の生簀を使った養殖は、クロマグロの他にも、クエ・トラフグ・ヒラメ・ブリ(ハマチ)・カンパチ・マダイ・シマアジ・マアジ・ヒラマサ・イシダイ・カワハギ・メバル・カサゴ・クロダイ・クロイソ・スズキ・チダイ・イサキ・オオベニ・メジナ・マサバ・マハタ・クルマエビ等、多種多様になってる。


 大陸大国と言う、大輸入先であり大輸出先でもある相手と紛争中で、完全に国交を断絶しているので、貿易量は不調ではあるが、その分厳選された超高級品以外は、比較的手頃な値段で国産品が国内流通している。

 安心安全な食材が、購入しやすい値段で国内流通しているのは、庶民には有り難い話だが、超円高の為に、超激安で輸入食材が売られている。


 大陸大国からは入って来なくなったが、東南アジアやインド、オーストラリアや南米から、大手商社が大量に買い付けてくる。

 もちろん、アメリカのある北米からも買い付けられるのだが、安全性には課題がある。

 中進国と呼ばれる新興工業経済地域では、高度成長期の日本と同じで、環境問題を無視した工業化が推し進められているのだ。


 それこそ、水俣病やイタイイタイ病と言った、公害病が蔓延しているのだ。

 メチル水銀化合物やカドミウムのような、人体に害のある物質が含有されている食材が、輸入品に紛れているかもしれない。

 間違ってか、それとも知らない振りをしていたかは証明できないが、現地人だけではなく、商社の日本人も、自分達の利益の為には、どれほどの悪行でもやってのけるだろう。


 だから、貿易収支の関係で輸入はするが、安物買いの命知らず以外は、国産品を購入するようになっている。

 もちろんそうなるようにマスコミを使って誘導したのだが、それでも安物を買う者にまで気を使う事は出来ない。

 今の日本人の収入ならば、全部国産品を使っても十分生活できるのだから。

 どうしても輸入しなければいけない食材は、支援物資として国連や貧困国に寄付するようになっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る