第51話攪乱戦

「殿下、どうなされますか?」

「少し遠いが、ブラッディベアーを連れてこよう」

「承りました」

 忍者達が不幸な女達をボニオン魔境に連れて来てくれたが、その時同時に多くの情報がもたらされた。

 その中には、貴重なボニオン公爵家の軍事情報も含まれていた。

 その情報を統合すると、ボニオン公爵家は魔境管理を放棄したようだ。

 王侯貴族に義務を放棄する、最低の決断だ!

 だがボニオン公爵家はその決断をした。

 領境の警備を厳重にして、領民を逃がさない事を優先した。

 まあ確かに、魔境から魔獣を溢れさせたという失態が明らかになれば、公爵であろうと御家断絶改易は避けられない。

 だから領境を閉じるのは理解できるが、魔境を放置するのは許せない。

 ましてそれが、自分の命を惜しんだボニオン公爵家騎士団からの提案だと言うのだからなおさらだ。

 だから罰を与えることにした。

 いや、罰と言うのは正確ではない。

 騎士としての責務を果たしてもらう。

 二匹のブラッディベアーを誘導し、臆病で卑怯なボニオン公爵家騎士団を襲撃させるのだ。

 魔境の中で銅級・鉄級の魔獣を腹一杯喰わせた後で、ボニオン公爵家騎士団に向けて追い出した。

 情けない話だが、魔獣を恐れたボニオン公爵家騎士団は、一番近い駐屯地でもボニオン魔境から徒歩で一日離れた場所に駐屯していた。

 ボニオン公爵家はアリステラ王国でも有数の大領主だから、その動員兵力は八個騎士団の八百騎・八千兵と言う強大なモノだ。

 一個騎士団が壊滅したとは言え、まだ七個騎士団が健在だ。

 その七個騎士団の内、四個騎士団がネッツェ王国との国境に駐屯しているが、ボニオン公爵家は密かにネッツェ王国と内通しているのなら、移動可能な戦力だ。

 まずはそのうちの一個騎士団を壊滅させる!

 ブラッディベアーに駐屯所を襲わせたが、ここでも下劣な行いがあった。

 売春婦だけではなく、近隣の村から女を拉致していたのだ。

 しかもその中には、年端もいかない幼女や少女までいた。

 余と爺は激怒した!

 女子供の安全を確保しながら、騎士団を皆殺しすることにした。

 領界警備についているので、騎士団が広く長く分屯していたので、三日三晩かけて殺しまわった。

 当然この騎士団にも、戦うことなく逃げ出す騎士や兵士がいたので、逃げた先の村や町の住民を巻き込まないように細心の注意が必要だった。

 だがこの騎士団の行状がボニオン公爵家に止めを刺した。

 魔獣に立ち向かう事なく、命惜しさに泣き叫び逃げ回る騎士や兵士の行状は、領民のボニオン公爵家への信頼や忠誠心を地に落とす事になった。

 ボニオン公爵家の民は、貧富の差なく公爵領から逃げ出した!

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