#51 メビウス
階段を駆け下りている時に、艦内放送に電源の入った音がした。
〝
カンカンカンと乾いた音を響かせながら、鉄骨の階段を急ぎ足で
〝我々、ガンサイド艦隊所属、巡洋空母テストレスはたった1つの遺された機体、隠れた変数理論を排出する。命令元はあのサング・エリー徒衆団だ。現在三機が我々の航路を追跡中、ガンベット07サイヲ・フッテイルくんとカミハの放逐を迫ってきた。我々、艦橋指令はこの命令を受け入れガンベット07カミハとサイヲ・フッテイルくんを射出する〟
《対応遅いぞ! 格納庫第7番だ!》
《あの機体を出すんですか? ムリですよ》
《いいからやれ! 艦長命令だ!》
〝先の戦闘で知っての通り。この世界には、まだ我々が知らされていない事実がある。しかしそれを我々は求めているのだろうか? 我々は機械に飼い慣らされた。これを否定できる人間がどこにいる? 我々が乗艦しているこの
《機体搬入準備! エレベータ接続急げよ!》
《
《現在、艦橋棟階段を降下中。甲板に出る》
《了解、機体は滑走路に上げろ!》
〝しかし、そうではない人間がいた。みなもよく知る人間だ。彼らは一人で立ち向かおうとしている。いや二人か。それでも我々が一顧だにしなかった心を彼らは秘めてこの艦を発とうとしている。私はこれを見て心苦しく思う〟
《機体の昇降機載せ、まだか?》
《待って下さい。艦長何か言ってます!》
《あの放送に構うな! いつもの病気だ》
〝我々はまた捨てようとしている。今も損傷を負った彼らをみすみす遺棄するのだ。それでも彼らは立ち向かう為の出撃を選んだ。もう動くことも出来ないのにだ。我々はこの艦隊戦でよく分からずに得た勝利に酔うだけなのか? 勝利に酔うだけでいいのか? サング・エリー徒衆団には勝てない。だからこそ臆病に閉じこもる。それを良しとしなかった人間がいる。彼らは新しい
《?、機体から高エネルギー反応っ!》
《コアエンジンが生きていた? 整備長!》
《飼い主を探してるだけだ。上げてやれ》
《ですがスクラップ同然ですよ?》
《上げてやれ。それが俺たちの仕事だっ》
〝我々の常識は変わろうとしている。それは彼らサング・エリー徒衆団の動きを見ても明らかだ。錆びついた理論を我々は知らなかった。機械は錆びついた理論に気付かなかった。今はたった二人だけが、その錆びついた理論を蘇らせようとしているッ〟
《機体載せました。昇降機上げます!》
《すまんな。これぐらいしかできなかった》
《感謝しています。艦内各位》
《艦載機上げろっ。生きて帰って来いよ!》
〝我々に彼らの代わりは出来ない。だが彼らの手助けはしたい。我々もすでに自分の足で立たなくてはならない時が来たのだ。テストレス諸君、我々は彼らの荊の道を支援する。この目で見届けるのだッ!〟
《謳われぬ変数理論をッッッッ!!!!!》
「サイヲくんッ」
艦橋棟の最下階にある甲板滑走路目前の鉄扉の前でサイヲが立ち止まると、ノマウ・カスタムが背後から息を切らして追い付いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます