#48 絶対零度変数理論



「太陽系第三惑星地球から送られた手紙は知っているな?」

「ネオボイジャー7358だ。それがどうしたっ?」

「お前たち夜の世界が俺たち昼の世界にお前たちの歴史だと言って押し付けた他の惑星の歴史の事だ。それを今も昼の世界のヤツラは自分たちの失われた過去の世界の出来事だと思っている」


 空中を舞う円盤の機体。海上を滑らかに滑り荷電粒子の攻撃を躱す黒い機体。


「俺たちがそうした。それ以外に歴史が無かった。それで何も問題は無かったはずだっ!」

「元素の周期表の元素が一つ足らなかったよな?」


 その言葉で、この会話を無線で傍受していた世界の全てが呼吸を止める。


「太陽系第三惑星地球。ネオボイジャー7358を宇宙に放ったこの惑星ほしはもう機械が支配している。人間は既にもういないよ。機械だけが残った世界だ。なぜならネオボイジャー7358は……」

「ネオボイジャー7358は機械によって作られ、そして発射された可能性が高かったからだっ」

「その通りだ。現に人間についての情報は一部だけに限定されていた。奴ら太陽系第三惑星地球にいた機械は、地球にいた人間という存在を、他の惑星の世界に教えたかったんじゃない。逆だ。他の惑星にも同じ人間が存在するかどうかを伝えたかったんだ」


 そして実際にこの惑星には存在していた……。


「だが問題は……」

「言うなッ」

「絶対零度が食い違っていた事」


 その絶望の言葉。


「絶対零度が……?」

「……違う……?」


 人間と機械の二組の戦闘を見ていることしかできない周囲の人間たちが呟く


「絶対零度の数値が食い違っていた。それ以上に元素の数もだ! 俺たちの世界の元素は全119。しかし地球の元素118だった。つまり俺たちの世界の絶対零度は今も274.26から274.25へと融点へと上昇しているんだよ。そして絶対零度が、水の融点である0度と重なった時、次のビッグバンが起こるッ!」

「そして元素がまた一つ世界が出来上がるのか……?」

「その通りだ! サング・エリー徒衆団のガンラーダ。そしてハヤミ・カザト!」

「ガンフラグっ! お前だけはここで差し違えるっ」


 高空からの荷電粒子砲攻撃とそれを吸収し反撃する黒い棺桶の戦闘が激化する。


「世界には隠れた変数があった!それを俺たちは隠していたよッ! 不確定性原理が無ければ俺たちは俺たちの地位を維持できない! この世界では機械は頂点でなければならないんだッ! それをお前たちは自分たちが機械の代わりに頂点になることを拒んだッ! お前たちが隠れた変数理論を、俺たちに与えなかったんだッ! れを!」

「甘ったれるなぁッ!」


 決定論によって、機械と人間が組む二組のチームによる決闘の勝敗が決定する。



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