#46 基本相互作用の無効化



 戦闘は再開された。

 海岸の岩場に座礁していた装甲に穴の空いた黒い機体が再起動を果たすと、前輪と後輪の電磁気力で宙に浮きだし機動を開始する。


「カミハ、全電源系回路と全機体管制系チェック」

「全て問題ありません」

「敵の攻撃が来たら被弾エネルギーは全て機体修復に回せ。装甲に空いた穴を閉じる」

「あなたが調子に乗ってあけた穴ですね」

「悪かったと思ってるよ。黙って従え」


 海岸から海上に滑り出た穴の空いた鉄の棺桶が、空飛ぶ円盤を捉えながら蟹走りで海面を高速で走っていく。

 それを見た空中のカザトとガンラーダは様子を伺っていた。


「機体の挙動に不安定さがない……。本当に蘇えったのか?」

「そう判断するのが妥当だろう。カザト。これより先の行動はどうする?」

「もう一度、ヤツラに無人機ドローンをぶつける。アイツラも無人機の驚異は分かってるはずだ」


「サイヲ、無人機ドローン来ます」

「無人機だからって攻撃手段は実弾か荷電粒子砲だ。全て吸い取れ」


 群がる蜂のように不快な音をさせながら空中を縦横無尽に飛び交う黒い小型の攻撃機体が命令を受け、海上で浮く黒い機体に目掛けて飛んでくる。


 空中機動小型機体。

 四角い噴射ノズルからの噴出だけで起動する小型機械機体。形状は色とりどりだが概ね円状か四角形状のモノが多かった。


 それらがヒュンヒュンとサイヲたちの周りを飛び交い、通常の有人機機動では限界に近い高速機動でも振り切る事が出来ない。


「速度秒速1キロ、制動距離0」


 サイヲの命令オーダー通り、

 カミハは秒速1キロで加速して、制動距離0で急制動する。


「なっ?」


 驚くカザトと、無言のガンラーダに、目の前で発揮した唐突の鋭角機動で全ての無人機械を出し抜いたサイヲとカミハの黒い棺桶が、目の前の海上に躍り出る。


「な、なんだ今のは?」


「第五相互作用と、位置エネルギー相互作用を無視させた。オレたちの超機動で発生した位置エネルギー慣性質量を全て瞬間エネルギーから第六と第七相互作用である弱い核力と強い核力の物質エネルギーに変換させた。更にそれをいまは第四相互作用である電磁相互作用としてエネルギーで溜めてある。だからいつでも撃てるぞ? 試して見るか」


 海面の波間で浮かぶ鉄の棺桶に、背後から無人機たちが追い掛けてきた。


「オレたち有人機は無人機以上の機動力を発揮できる。だがそれをお前たち同じ有人型機体であるサング・エリー徒集団であるお前たちにはできるかな?」


 試して言うとサイヲがまたアクセルフットレバーを踏み込んで機体機動を開始すると輪舞を始めた。無人機と有人機による戦闘の乱舞を。


 それを目の前にして、無人機をけしかけた側である無人機に命令を与えたカザトとガンラーダは茫然と見ていることしかできなかった。




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