#39 ガンラーダとハヤミ・カザト
ガンラーダとハヤミ・カザト。
彼らは、丸い円盤状の小型浮遊機体ガンラーダと、それを筋斗雲のように乗りこなす一人の少年で成り立つ人間と機械のコンビだった。
「なんだよ。ガンフラグッ。黒い鉄の棺桶だと聞いていたらホントに鉄の棺桶じゃないかッ? その真っ黒な陸上機動機械。すぐに古臭いとは思わないのかっ?」
「ガン……フラグっ?」
丸い円盤の縁で、機体装甲ごと海上で押し出されているサイヲが機体の中から敵性対象の方向を向く。
「そうだ。ガンフラグっていうのはお前らの名前だ。聞いてなかったのか? 数週間前にお前が落としたガンファイブ以来、俺たちは、お前をその名で呼んでいた。それを、あれほどテレビで流してやったのに見てなかったというのか?」
「生憎テレビは見ていない。お前らの動きなんてこっちは最初から眼中にない」
「眼中にないなら、なんでこの艦隊戦に参加したんだっ?」
平らな円盤の上に立って乗る少年が、円盤を傾けて鉄の棺桶の黒い機体を押し出しながら言う。
「エントリーしたのはこっちが先だった。それは知っていたはずだ。お前らガンフラグは俺とガンラーダの突拍子もないこの行動に釣られてノコノコここまでやってきたんだ。しかも当てこすりみたいに俺たちとは敵対側に回ってなっ!お前らにとって、この事態が発生する事は分かりきっていた筈だっ」
立っている円盤を傾けて迫ってくる少年カザトの言葉は真実だった。
サイヲはこのサング・エリー徒衆団の暴挙が許せなかったのだ。夜の機械の住人が圧倒的な攻撃力を所持したまま、夜の機械達に戦力を制限されている昼側のささやかな戦闘行事に参加してきたのだから。
「見過ごすことができなかったのは、ガンサイド側の戦力が圧倒的に不利だったからだ。だからおれたちはこっち側についた。しかしお前らの戦力はどうでもいい。お前らの事はやっぱり眼中にない。サング・エリー徒衆団なら誰であっても変わりはないッ! どうせ不確定性原理に縛られた世界の住人だッ!」
「そうだよ! 問題はそこだったんだっ。オレたちはもう一度お前たちと会う必要があったんだ。だから最初にオレがここに来た。やるぞっ! ガンラーダッ。回線を繋げてくれっ」
「了解だ。カザト。周囲の回線を解放させる」
言うとカザトの相棒である円盤状の機体、
「この艦隊戦に参加してるヤツらに全てを教えるぞ。オレたちサング・エリー徒が最も欲しがっているお前たちの事をッ」
世界はまだ歴史を知らない。
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