#38 サング・エリー徒衆団
たった一機で襲撃してきた赤い流星の機体が繰り出す高機動戦闘による乱入で、七機あったガンベット小隊の機体の内、六機の機体は翻弄される。
〝ほう、なかなかいい統制が執れている。使える部隊を持っているじゃないか、アスロ。
そして、やるなフルブライト。ここまで私の裏を掻いたのは君たちが初めてだよッ!〟
洋上で踊る赤い流星が、六機の黒い機体を手玉に取っていると、たった一機だけ取り残された黒い棺桶の機体を見る。
〝知っているぞ? 小型の汎用QC『カミハ』と、その乗り手のサイヲくんだろう。サイヲ。サイヲ・フッテイルくん。君たちの話は聞いている……〟
大の大人の無線からの声が、洋上で茫然となっている子供の心に語り掛ける。
〝だがおっと、君たちの相手は私じゃないんだ。私はお使いでね。君たちに用があるのは私の背後にいる……〟
「この瞬間を待っていたぞっ! ガンフラグッ!」
洋上で乱舞する赤い流星の背後から黒い影が唐突に飛来して、洋上で固まっていたサイヲの機体と衝突する。
「……っぃッ……。……やっぱり……かッ!」
歯噛みする受けた衝撃のまま洋上の海面をスライドされながら衝突したまま小隊から離されていく。
「ガンベット07ッ」
「サイヲくんッ!」
「ガンベット07からガンベット小隊へ。自機ガンベット07は一時貴隊の所属から離れます。以後の行動は我々ガンベット07の生死に関わらず無視して生存率の高い選択をとって下さい」
置き土産のセリフを残して、衝突してきた黒い影に押されながら、黒い棺桶のサイヲとカミハは相手を見た。
「……いきなりの登場か……。サング・エリー
「一番速いヤツ。オレはお前と会いたかった」
待ちわびた少年の声が、未明の波立つ海上で開始される。
「カミハ。ヤツの所属の確認だっ」
「衝突してきた相手はサング・エリー
それは、鉄地球を統べる夜の住人サング・エリー徒集団の中でも精鋭中の精鋭の衆団。
この惑星の主、サング・エリーの近衛兵でもあるサング・エリー徒衆団の一席。
「さあ。レースを始めようか走りながら兵器で壊して強さを決めるレースを。最速の男はこのおれだッ」
それを確かめるためにこの艦隊戦に参加した。そしてそれをサイヲも分かっていた。
「なんだとッ!」
「サング・エリー徒衆団ッ? なんでよりによってそんな存在がここにッ?」
世界の中でも13人しか存在しないエリート中のエリート。
そんな選ばれし人間と機械が姿を現したのだ。
この艦隊戦に参戦したていた人間の全てが、その驚愕的な事態に驚いている。
「盛り上がってきたな。ガンフラグ! さあ、オレはお前を乗り越えて見せる!」
熱い闘志を燃やす少年の声で、不確定性原理の世界が加速する序曲が始まる。
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