#35 挟撃、阻止
……戦場は混乱した。
《兵站? 本当に補給部隊なのか?》
《間違いありません。補給部隊ですよ。そしてこれは仮設なのか? 急造の組み立て部隊も存在している? ヤツラ本気で?》
驚くべき大胆さ。
《敵ガンレーン艦隊は挟撃を企んでいた? 右の海岸線にはさっきまで目ぼしい機体反応も無かったはずだ! そうだなッ!》
《そうです! だから俺たちもノーマークだった。なのにあった! 敵は露営していて俺たちが通り過ぎるのを待っていたッ? もし本当にそうなら、何も気づかずに俺たちが通り過ぎていたとしたら……っ》
完全な敗北を喫していった。
この虚を突かれた自分たち戦闘の最前線部隊である斥候部隊の動揺は瞬く間に背後の本隊旗艦にも伝わる今ごろ本隊も慌てふためいているはずだ。
当然このガンベット小隊の母艦、テストレスの艦長たちでさえも。
許可なく艦砲射撃を行った小空母でさえ、想定していなかった緊急事態の発生。
いや、それは敵側も同じなのだろう。むしろ敵側はこれ以上に混乱しているはずだ。
練りに練っていた待ち伏せのつもりが敵に見破られていた。そして意表を突かれ正確に迎撃もされた。
待ち伏せに割いた強襲部隊に一体どれだけの戦力を差し向けていたのかはしらないが、全戦力の三分の一は与えていたはずだ。でなければ挟撃の成功率は下がる一方。
一か八かの天命戦に賭けるその暴挙。
賭けはこちらの自軍ガンサイド艦隊が勝利した。
……しかし、果たしてそうなのか?
《た、隊長、これからどうします?》
《他、戦闘部隊からも通信を求めてきてます。我が隊との連携を取りたいと。隊長、判断をお願いします!》
部隊長としての指揮力を発揮する時が来た。しかしこの状況は前代未聞だ。
普通に考えればチャンスでもある。だがそれにやすやすと飛びついて大丈夫なのか?
《ガンベットリーダーより各機、敵斥候部隊の状況は分かるか?》
《敵斥候部隊の距離30から40に後退中》
敵が後退する? なら敵側も混乱している状況なのか? 転進する敵を追撃する絶好の機会が目の前にある。想定していない事態は向こうも同じ……。
どうする……?
現在の状況を深く分析する。
この状況は先に敵側が待ち伏せを仕掛けたことによる罠だった。しかし、それをこちら側は見抜いた。そして正確に狙撃して敵の計画を阻止した。
敵にとっては前代未聞、こちらにとっては戦災一隅の好機。しかしこの判断に気持ちよく乗れないのは何故だ?
……それは……。
《隊長。味方……混乱していますよ》
唐突に入ったガンベット07の言葉。
《味方が……混乱……?》
《そうです。
その言葉で全ての危惧感の正体がわかった。
《ガンベット05よりガンベット07! ……お前っ》
《……わかった》
《た、隊長っ?》
《ガンベット小隊の全機に通達。これよりガンベット01の小隊指揮権は全て、ガンベット06に委譲するッ!》
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