#31 機体起動シークエンス



「ハンガーハッチ開けろッ! 出撃シークエンス準備ッ! 14番からだ! 間違えるなよッ!」


 艦内ハンガーの人手じんいんが慌ただしく動く。


「遅い御着きですね。サイヲ。上層部はモメ事でしたか?」

「どうせ傍受してたんだろ? 話の内容は分かってるはずだ」


 黒い機体上部にある開いた装甲ハッチから搭乗席にとび降りて座席に着く。


「現在、変数の探査スキャンを実施中、3879216518変動数までの正常を確認。現在の決定論ワタシの結論は、彼の予想は「あり得ないノー」です」

「その結論をあのヒトは一人で覆そうとしている。オレでも出来ない推論だ。オレの宿命のライバルは、もしかしてこっち側だったのか?」

「それは戦闘後に分かるでしょう。ワタシの決定論を覆す可能性そんざいの発見……。面白いものだ」

「暢気に興味なんか惹かれてる場合じゃない。もしそれが本当なら現場は相当、混乱する。そこら辺の予想もそっちに任せるぞ?いいな、カミハッ!」

「了解、サイヲ。ワタシの主人が、あなただけである事をワタシに証明してください」

「やれるだけのことはやってみるさ。発進シークエンスは整備長ゲーベッシュさんが並行してやってくれてるからそっちに任せよう。機体の整備状況は?」

「#22、#11、ともに正常、新システム実装なし」

「機体下のハンガー床移送板大型エレベータが上の滑走路艦装へ向けて動き出したな。艦艇滑走路カタパルトに追い出される前に、機体状況を整えておくぞ。ムーンルーフのハッチ閉じろ」

「ムーンルーフ部ハッチ閉装。点呼どうぞ」


「まず機体前部。前輪左超電導圧、前輪右超電導圧、後輪左超電導圧、後輪右超電導圧、各部確認」

「了解。点呼復唱。前輪左超電導圧、前輪右超電導圧、後輪左超電導圧、後輪右超電導圧、各部超伝導圧正常」

「……次、右側面配電回路、左側面配電回路、前方副交感電絡系、後方網細電管脈流、走査開始」

「点呼了解。右側面配電回路、左側面配電回路、前方副交感電絡系、後方網細電管脈流、応答正常」

「次、内部、超導体反応、走査点検」

「了、内部、超導体反応、応答確認。全て正常動作」


「最終点検。……主電源、常温核融合路、完全起動」

「指令了解。――主電源、常温核融合路、覚醒完了」


 いつも通りの起動確認を終えて、全てのスイッチに火を入れていく。


「各エネルギー・システム系統のアプリ起動は後回しだ。それは現場で起動させる」

「了解、現場での指示で設定を変更」


 機体を乗せた艦内移送床エレベーターがレールに填まり、一階から二階へと上がっていく。


「行くぞ……、カミハッ。出撃準備!」


 艦上の滑走路カタパルトに黒い機体が出現する。



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