#24 巡洋空母艦テストレス
大会の主催者側から配置決定の通知が来た。
「集合場所はガンサイド第七埠頭です」
「これでついに車中泊からも解放されるな」
「ワタシの車内はそんなに苦痛でしたか?」
「お前の車内は居住空間用にはできてないんだから当たり前だろ」
機械の言葉にサイヲは反論した。そうでなくとも座席のリクライニングは硬い。そこに一日中、缶詰にされれば尻も腰も悲鳴を上げる。
「ならばリクライニングも、もう少し改造してみたらどうですか」
「戦闘中に快適なリクライニングシートが必要だと思うか? 身体に負荷をかけない機体設計は大事だが、快適にまでする必要はない」
ばっさり言い切ると機械も何も言わなくなった。
「お前らは人間を甘やかしすぎだ」
「人間の方がひ弱なんです」
減らず口だけはよく叩く機械だ。それでも言ってる事は機械に分がある。人間はひ弱だから、機械を神に祀り上げて奴隷として酷使している。
「だからって嫌悪はしてませんよ」
「嫌悪してるだろ、なんて誰が言った?」
「顔に書いてあります」
「だとしたらお前たちが俺たちを嫌悪してるんじゃなくて、俺たち人間のほうが、お前ら機械を嫌悪してるってことだよ」
「気持ちはわかります」
「わかるな! そんな気持ちまで理解されたら、人間は本当に用済みになっちまう」
サイヲが笑うと機械であるカミハまで笑った。
「2分後に目的地に着きます」
カミハの正確な予告にサイヲは安心して座席にもたれる。流れる車窓の景色の先には水平線がある。慣れない潮の臭い。14年間しか生きていないサイヲにとっては、まだまだ新鮮な経験だ。
「集合場所、第七埠頭の何番だっけ?」
「第七埠頭の七番です」
新しい予感は、新しい状況によって発生する。
「ここが……、オレたちの運が引き当てた配属場所……」
サイヲが岸壁沿いの車道の途中で車を止める。車を停めて見たのは、岸壁に停泊している巡洋艦だった。
鈍色に輝く、艦載機能を多大に備える巡洋空母艦……。
人々の賑わう声が聞こえる。巡洋空母の側面から開いている艦載車両の入り口では、この巡洋空母の乗組員らしき作業員がせわしなく物流の搬入を続けている。
「あ、サイヲくん。サイヲ・フッテイルくん!」
大声で呼ばれた。大きく手を振って、数日前に防波堤であったばかりの、あの少年ノマウ・カスタムが搬入車両の入り口から走ってきた。
「この艦に決まったんですか? ぼくもこの艦に乗っているんです。やっぱり同じチームになりましたね。これからよろしくお願いします。戦友!」
……これが、これからのサイヲの母艦となる
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