#18 新たな戦場



 夜を巡る争いに明け暮れていた人間は、機械によってその本能を失くすことになった。国が消えたからだ。国が消えたから争う理由もなくなった。


 しかし、国が消えるという事は歴史も消えるという事だ。国が消えて歴史も消えると、


 残った人類と機械には運良く、別の歴史が贈られることになった。それが……。


「ネオボイジャ―7358……」


 太陽系第三惑星地球と呼ばれる惑星から贈られてきた金属の手紙。現在のこの惑星は……、その第三惑星地球の歴史を、自分たちの過去の歴史として贋作しようとしている。

 他人の惑星の歴史を、自分の歴史にする。


 そんな事をする理由が……どこのあるのだろう?


 この惑星を支配する機械たちは……本当の歴史を知っているはずだ。

 それなのになぜ、他所の惑星の歴史を、自分の歴史にしようとするのかが分からない。


「しかも……肝心の情報は都合よく隠したままで……」


 サイヲはベッドに寝転んで天井を見ながらそう思った。


「……サイヲ」

「どうしたカミハ?」


 壁越しにカミハが止まっている方角を見る。


「……妙な動きがあります。確認を」


 相棒の言葉と共に、送られてきた情報に目を通すと、大きく目を開いた。


「なんだ……? これ? これって……本当なのか……?」


サイヲが問い返しても返事は返ってこない。……という事は……これは事実なのだ……。


「……わかった。明日出発する……」

「……サイヲ」

「出発だ。ついでにモウバさんの所にも、もう一度よる」

「補給ですか?」


 確認する声にサイヲは頷く。


「……長丁場になりそうだ。まだ二日経っただけなのに、けっこう減らした……」


 ベッドの上でお気に入りをシャクリと齧った。



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