#17 昼と夜の惑星



 整備格納庫ハンガー内の整備用駐車スペースの正面にある宿泊用の個室の中で、シャワーを浴び終わると、濡れた髪を拭きながらシングルベッドに腰を下ろした。


「フィールドアップ」


 サイヲが唱えると、ベッドの薄暗い周囲に映像が投影される。


「ガンアースの映像を」


 サイヲが求めると、目の前のブラウザ画面が球体上の立体映像を映し出した。その球体は、どこにでもある……昼の光と夜の影がある惑星の立体映像。


 今はもう、機械の都市しか存在していない哀しい惑星……。サイヲはそれを見つめながらベッドに横になった。


 地上の世界を昼と夜の真っ二つに分けている鉄の惑星。この惑星は常に同じ面を太陽に向けて公転している。さらに自転軸の方向も太陽に向いている為、さながら太陽は昼の北極星となって、常に同じ地表を同じ角度で焼き付けていた。それは人にとって地獄の日射しでしかない。


 ここ、W2も同様であり、昼の極軸から二番目に遠い緯度にある地域だった。つまりここは、この惑星の裏側にある夜の世界に二番目に近い、昼の世界。


 歴史の授業を始めるなら……、過去、機械が管理する以前のこの惑星の人類世界は、昼を巡って争いを起こしていたらしい。貴重な昼間の世界を求めて……戦争を繰り返していた。ところが惑星の支配者が人間から機械に変わると今度は、夜を巡って争いが起こるようになる。

 機械を作る為の資源が豊富だったからだ。


 この惑星の歴史は気まぐれに、争いの理由をころころと変えた。昼の世界を巡って争っていたと思ったら……、今度は夜の世界を巡って争いを起こす……。

 それを止めさせたのは……やはり機械だった……。



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