#16 謎の機体



 それは昼のニュースだった。ハンガーの天井部に備え付けてある機体調整用の数値電光掲示板ポテンシャルパラメータの画面が切り替わって、映像を映し出した。


「なに?」


 パルサが気付くと、映し出された天井部の映像を食い入るように見る。


『本日未明、エリアE1にあるガンステイトの一部が攻撃を受けました。襲撃したのは大型の機動機械と推測され現在、逃走を図っている模様……』


 音声と共にテロップが流れる。画面の中では、暗闇の中をサーチライトが回っている夜空の景色が映っている。

 テレビの映像からは、それだけしか分かることがなかった。


「攻撃を受けたの? E1のどこかが?」


 驚くパルサが、素早く自分の持っていた情報端末タブレットを開く。


「エリアE1……。……襲撃されたのはその中にある超大型の機械都市ガンファイブ? サング・エリー徒集団テレーボウじゃないの! 誰がやったの? 軍事用のエリアE1からその奥にいる機械たちを相手にして無事で済むわけがないわ!」


 慄く少女の声に、少年も動揺して画面を見つめる。


「どうしよう。学校に行かなくちゃ。きっと学校むこうも大騒ぎになってる」

「……あ、ああ。その方がいい。オレも、もう少し、ここで様子を見てる……」

「ウソでしょ? こんな大事になってるのに? 学校どころじゃない。すぐにこの都市まちの都長が声明を出すわ。夜の機械たちから何を言われるかわかったものじゃない!」


 大声を出すパルサがサイヲも気にせずに駆け足で去っていった。


「……この都市まちの長が、ね……?」

「……サイヲ」

「分かってる。パルサの傍聴距離を……」

「範囲、離れました。もっとも傍聴可能距離であっても不傍受にすることは可能ですが……」

「どっちみち心配しなくていいってことか……。それにしてもサングエリー徒集団め。攻撃してきたのが大型の機動機械だと? 何を考えてる?」

「情報操作を確認済み。敵Eエリア側の目的は、ワタシたち「隠れた変数理論」の存在を隠蔽すること……」


 相棒の予測に眉根を寄せる。


「隠れた変数理論の隠蔽……。それならまだ分かるけど、だったら攻撃を受けたことまでバラす必要はない。攻撃されたことは公開するが、攻撃した相手の情報は誤ったまま流す。この状況はなんだ? アイツらはオレたちを捕まえる気があるのか?」

「それは、この都市の長セレーナに訊いた方が早いと思いますが?」

「セレーナが? オレをホテルに呼んだ理由はそれか?」

「目的としては半々といったところでしょうか」

「……女の考える事はよく分からない」

「ワタシも、その女の一人だということをお忘れなく」

「分かってますよ……。母さん」

「サイヲ、ワタシは母ではなく姉です」

「恐い姉だな」


 姉であり、母であり、相棒でもある相方に背を向けて歩き出す。


「どこへ?」

部屋モーテルの中に入ってる。ちょっと頭を冷やしてくるよ」


 そう言って、整備格納庫ハンガーの中にある宿泊用の部屋のドアを開けた。



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