或るGIRLの死

しいな らん

或るGIRLの死

「この世は恋と夢でできてるんだと思ってたの」

 デパス? マイスリー? あとなんだか。

 クラブで私に近寄ってきた男の子が分けてくれたの。

 好みじゃなかったから貰うものだけもらってあしらったけど。

 私はそーゆー薬詳しくないから適当に数錠口に放り込んで、甘いカクテルで流し込んだ

 十分ぐらいしてふわふわ。

 肌が敏感になってウーファーの音が子宮まで響いてマジちょっとイッちゃいそう。

 私は白く薄いワンピース一枚の姿で、周りからは超浮いてる。

 まだピチピチのJKの肌もあらわな姿にイヤラシー目的で男どもが近づいてくる。

 でも全部無視。こんなところに私の王子様はいない。

 私の王子さまはまだ来ない。

 クラブの片隅で彼は『多重人格探偵サイコ』という売れ線の漫画を読んで暇つぶしていた。

 有害図書に認定されかけた漫画だ、今じゃグロテスクもエロティックもどこにでもありふれている。

 時計を見れば丁度深夜十二時を迎えるころ、王子さまはやってきた。

 クラブのごった返す人ごみを掻い潜り私の元まで一直線で。

「おまたせ」

「待ってないよ」

「よくこんなうるさいところいれるな、出てどっかでゆっくりしよう」

 クラブを出て、マクドナルドに入る。

 ねぇねぇ見てみて。

 腕を見せる。アルコールを飲んだせいで肌が赤くなり、リストカットの後が浮かび上がる。

「ねぇ、綺麗でしょ、私の生きた証なの」 

 彼は何も云ってくれない。

「ねえ、私が死んだら悲しむ?」

「そりゃそうさ」

「ほんとにぃ~?」

「当たり前だろ」

「でもさ、嘘でもそんな事言ってくれる人、純だけだよ。お母さんもお父さんも、私なんて居なければいーって思ってるんだ」

「死んだり、するなよな」

「死ぬことと、死んだみたいに生きてる事、どう違うの?」

「全然違うだろ」

「自分殺して生きてる方が私よっぽど耐えられない」

 そうして適当な話をして別れた。

 その帰りに彼女帰りに小瓶に入ったジェリービーンズを万引きして捕まった。

 彼女にとってかわいいことは何より大事だった。

 可愛らしい小瓶に詰まった色とりどりのジェリービーンズはお金を出して買うんじゃなくて、万引きくらいしたほうが、胸が締め付けられるようなかわいさにぴったりでしょ?

 バーコードのピッという電子音とともに消費税込みの値段がレジから表示されたら、かわいいものはただの資本主義の商品に変ってしまう。

 夢から覚めてしまう気が、する。

 だから彼女は翌日死んだ。

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或るGIRLの死 しいな らん @satori_arai

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