指輪

こうやって自分はいつまでも何事も解決できず何度も自分の姉と同じような結末を繰り返してしまうのだ。

清水先生はなにもできない自分を恥じる。目の前の余裕気なユウラクが憎たらしくてたまらない。

「あなたはいつもこうしてなにもできないくせに僕たちに刃向かうフリをしてその未完な物語の至らなさに自身の気持ちを発散させて人生を実のところ楽しんでいる敗北者なのですよ」

ユウラクは無感情につぶやく。

「それでもまた僕たちに立ち向かうのですか」

「秘密の花園は破壊しなければならない。止まった時計ならばそれなりに生きていく道があるのよ。私はこの道を完遂させるために時間を費やする」

「なんでも結構なことです。しかし今の私にはあなたはかなり邪魔なのですよ。実際のところ。今回はいつも違うのでね。残念ながら永遠を保証されている僕が永遠ではないあなたを破壊することが叶わないことが本当に惜しいことなのですよ」

そのとき謎の生物が血を吐いた。

謎の生物の身体に亀裂が走り始める。

清水先生は自分が書き残した伏線が花となり得たことを悟り紅潮した。

「一体何事と言うのか⁉︎」

ユウラクの動揺をよそに清水先生は自らの指輪を取り外し謎の生物の口へ押し込んだ。

ユウラクは一歩遅れて清水先生を押し倒したが遅かった。謎の生物はもう指輪を飲み込んで居た。

「一体何をした!」

「私の勝ちよ」

清水先生はほくそ笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る