秘密の花園へ

サチコは自宅に籠るか学校に通うか以外になんの行動も起こさなかった。

自然にユウラクが出会わないような状況を選んでいるのだ。

サチコは人生は灰色の程を帯びている。

これからはもう錆びた時計がコチコチと歩みを進めるほかないのではないか?

サチコは退屈している。

しかし、それを目撃した瞬間赤い虎が広野を駆けているかのように自分自身が揺らいでしまった。視力と視野の意味が錯綜し世界の見つめ方を忘れてしまったかのように世界は簡単に姿を変えた。

赤い薔薇になったかのように思われたミチとコウタが手を繋いで道を歩いていたのである。

サチコは目の前が何であるのかを忘れてしまった。目の前の出来事を呆然と見送るしかなかった。サチコはもう世界が信じられない気持ちでいっぱいとなった。

サチコは自然に豊野崎公園に足を進めていた。

コール音が夜の公園に響く。サチコは電話をとる。

『やあ』

青く染まった海が空に惹かれて一粒ずつ浮かんでいくようなユウラクの声がする。電話番号を教えていないのに。

「なによ」

『君は永遠になりたいんだね』

「そうよ」

「なら手を伸ばして」

フード姿のユウラクが目の前に立っている。

サチコはなんの抵抗もなくユウラクに手を伸ばした。

ユウラクは顔は酷く濁ってきた気がする。

狙っていた獲物が餌に掛かり満足したのだろうか。

よくわからない前とは別の生物がいる。

清水先生の叫び声が聞こえた気がするが少しずつ意識が混濁としてきた。なにが正しいのかわからない。

サチコは気を失った。

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