バラ売り
夕焼けが町に寂しさを照らす。
放課後祖母のもとを訪れてから帰るといつもこれぐらいの時間になる。
それなりには商店が立ち並ぶ駅前は人がバラバラとそれぞれの運命を享受していた。
「薔薇は要りませんか」
黒いローブに覆われた男が薔薇を配っている。誰も彼から薔薇を受け取らない。男はしょげる様子もなく薔薇を配ろうとしている。
「薔薇は要りませんか」
いつのまにか立ち止まっていた。サチコは自分の元へ近づいてきた男に目を瞬かせる。
赤い薔薇を押し付けられる。サチコは男と目が合う。胸がどきりとする。男は白髪で目は赤かった。
男はサチコから離れていく。サチコは押し付けられた赤い薔薇を見つめたまま立ち尽くす。
白髪で赤い目をした男と薔薇。サチコはなにか世界が狂い始めている気がして背中をブルブル震わせた。
帰宅後サチコは薔薇を自室に放り投げて、ミチに今日会ったことをLINEしたが翌日を迎えても既読はつかなかった。
それどころかミチは学校に来なかった。
世界は本当に狂い始めている。
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