第8話 にっぽん!
2020年東京オリンピックの開催の日が訪れた。
ウランちゃんといえば心臓バクバク顔ボーボーであった。
首相は得意顔でウランちゃんへ近づいた。
「どうだね、気分は」
得意顔でといっても、本人の中ではそうなのであって、本当はデレデレであった。
「緊張してるけど……ボク、頑張りますっ!」
「待ったぁ!」
どこから入ったのだろう、あのすいすいの小柄な男だ。
ウランちゃんにデレデレしている間に首相は身を取られ、頭には銃が構えられていた。
ガードマンはすぐに取り囲む。
「打ってみろ、もしウランちゃんに当たりでもしたら俺らどころかこの会場何万人全部吹っ飛ぶぜ」
ギラギラ下目で小柄な男はそういうが、あっけなく首相がかえす。
「彼女の耐久性は何度も確認済みだ。アンチマテリアルライフルでもなければ傷もつけられないよ」
「くっ……」
一瞬で理解し、男は観念したようで、その場に座り込み、自らの額に銃口をあてがった。
「やめてくださいっ!」
突然、ウランちゃんが叫ぶ。
「死んだりしたら、いけません、それに悲しむ人がいるはずです!」
「そんなもんいねぇんだよ……」
「私が悲しいです」
男は目を見開いた、そして自分でも気づいているのかいないのか、大粒の涙を流している。
「ありがとう……」
虚しい銃声が会場のスタッフルームにこだました。
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