第10話 パパはお医者さま。

「リューイ、キッズクラブはどうだ? 楽しいか?」

「うんっ! あのね、おともだちもね、いっぱいできたの!」

「そうか。それはよかったな」

「あら、エリオット。おかえりなさい」

「ただいま、リリア」


夕飯を作る為にキッチンに籠もっていたリリアは、食卓に運ぶ際に帰宅した旦那様が目に入り、笑顔を向けた。

テーブルに料理を並べ終えたタイミングを見計らって、旦那様ことエリオットはリリアに軽くハグをした。両手を広げて待っている息子のリューイにも少しかがんで同じようにハグをする。

リリアは二人に笑顔を向けて言った。


「さあ、手を洗っていらっしゃい。ご飯ができましたよ」



「仕事の方はどうだい?」

「え、あ、うん。昔の同僚も一緒で楽しくお仕事させていただいてるわよ」

「それにしても、リリアにそんな特技があったなんて知らなかったよ」

「そんな大層なものじゃないから。魔法って言ってもほんと基礎中の基礎だし、私が先生なんてって思ったんだけどね」

ボロが出ないように魔法すらも封印していたので、前もって用意しておいた応えを澱みなく答える。

「それにしても。よく働くの許してくれたよね。専業主婦でいて欲しいって言ってなかった?」

「いや、そう思っていたんだけどさ。通勤に時間がかからないって言うし、リューイにはいい教育を受けさせてやりたいし。俺は身体が弱くて勇者になれなかったからな。色々経験させてやりたいと思ってるんだ」

「エリオットは勇者になりたかったの?」

「ああ。男の子は一度は勇者に憧れるものだよ」


へーそうなんだー? とにこやかに相槌を打ちながら、エリオットはお仕事どうだった?、とさり気なく話題を変えた。


この会話は精神衛生上よろしくない。


今日はねーおもしろい患者さんが来てね、とと楽しげに話す旦那様に相槌を打ちながら、食事と会話を楽しんだ。


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