第10話 パパはお医者さま。
「リューイ、キッズクラブはどうだ? 楽しいか?」
「うんっ! あのね、おともだちもね、いっぱいできたの!」
「そうか。それはよかったな」
「あら、エリオット。おかえりなさい」
「ただいま、リリア」
夕飯を作る為にキッチンに籠もっていたリリアは、食卓に運ぶ際に帰宅した旦那様が目に入り、笑顔を向けた。
テーブルに料理を並べ終えたタイミングを見計らって、旦那様ことエリオットはリリアに軽くハグをした。両手を広げて待っている息子のリューイにも少しかがんで同じようにハグをする。
リリアは二人に笑顔を向けて言った。
「さあ、手を洗っていらっしゃい。ご飯ができましたよ」
「仕事の方はどうだい?」
「え、あ、うん。昔の同僚も一緒で楽しくお仕事させていただいてるわよ」
「それにしても、リリアにそんな特技があったなんて知らなかったよ」
「そんな大層なものじゃないから。魔法って言ってもほんと基礎中の基礎だし、私が先生なんてって思ったんだけどね」
ボロが出ないように魔法すらも封印していたので、前もって用意しておいた応えを澱みなく答える。
「それにしても。よく働くの許してくれたよね。専業主婦でいて欲しいって言ってなかった?」
「いや、そう思っていたんだけどさ。通勤に時間がかからないって言うし、リューイにはいい教育を受けさせてやりたいし。俺は身体が弱くて勇者になれなかったからな。色々経験させてやりたいと思ってるんだ」
「エリオットは勇者になりたかったの?」
「ああ。男の子は一度は勇者に憧れるものだよ」
へーそうなんだー? とにこやかに相槌を打ちながら、エリオットはお仕事どうだった?、とさり気なく話題を変えた。
この会話は精神衛生上よろしくない。
今日はねーおもしろい患者さんが来てね、とと楽しげに話す旦那様に相槌を打ちながら、食事と会話を楽しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます