第6話 波乱のテスト 〜筆記編〜

「はい。このクラスを担当する事になりました、リリア・マロンです。このクラスの全ての授業を担当しますので、わからないことがあれば何でも聞いてくださいね」

入ってきた生徒が全員席についたのを見計らって、簡単な自己紹介と挨拶をする。教壇に立って全体を見ているわけだが。

....やる気ないな、こいつら。


「他のクラスは聞いたことある有名な勇者ばっかなのに、このクラスだけ無名なオバサンとかマジありえないんだけどー」

「組合に見捨てられてんじゃね?」

「やる気失せるわー」


なんて声が後ろの方から聞こえてくる。

聞こえてるぞ、お前ら。てか、誰がオバサンじゃ、誰が。

満面の笑みを浮かべながら額に青筋が浮かぶのを見たエイブラムが、慌ててフォローに入る。


「こほん。えー、こちらのリリア先生はですね、組合を離れて10年経ちますので名前を知らない方も多いとは思いますが、非常に優秀な方ですから、みなさん安心して授業を受けてくださいね。一日も早く、ここにいる全員が組合に戻れる事を期待しています」


「「「はーい」」」


これまたやる気がない返事が、微妙にバラバラな感じで返ってきた。


気を取り直して。


「はい、じゃあみなさんの実力を見たいので、今日は簡単なテストをします。魔法学、薬学、冒険に必要な知識、アイテムや装備等総合した総合学の三教科です」


「えー。入学式にテストすんのー」

「入学式って式終わったら帰るもんじゃね?」

「聞いてないんだけどー」

「マジうざいー」


口々に抗議が来るが、こちらの知ったことではない。授業料免除どころか、半値とはいえ給料まで出てるんだから他の入学者と一緒にするな、と言いたい。

私は抗議を残らずスルーし、はーい、じゃあプリント配りまーす、と前から順に配っていった。


― 数時間後 ―


プリントすべてを回収し、昼休憩と称して生徒全員を食堂へ追いやった後、教室で採点していたリリアは、採点終えた瞬間、机に突っ伏した。



なに、これ?



中にはそこそこできている人もいなかったわけではない、が。


できないとかできるとか


そういうレベルでは、ない。


全員がレベル1と聞いていたが。


1すらあるのか?というレベル。


たぶん、今日入学したばかりの新入生の方がもうちょっとできるんじゃないか、と思うほどのレベルの低さに、ため息と同時に組合への怒りが沸々と沸いてくる。


「エイブラム、コレなに?」

「だから言ったじゃないですか。組合も手を焼く落ちこぼれ組だって」

「いや、もうそういうレベルじゃないでしょ? こいつらによくもまあ給料払ってたね? 組合馬鹿なの?」

「まあまあ…その辺は私の口からはなんとも言い難く」

はぁ…と深いため息を吐く。というかもうため息しか出ない。

「午後から召喚術のテストする予定なんだけど…教室と教室周りのシールド強化と、最悪の事態が起きた場合、リミッター解除するから備えといてくれる? もう嫌な予感しかしないから、フォローは任せる」

「全力でシールド張りますが…壊さないで下さいね?」

「保証はできないけど、善処はする」


各自のテスト結果を写し取り、机に返却していく。

ふと時計を見るとそろそろお昼休みが終わろうとする時間だった。リリアとエイブラムは慌てて持っていた軽食を口に押し込んだ。

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