第11話 同窓会で驚いた!

5月の連休に5年ごとに開かれている高校の同窓会に出席した。この前は27歳の時だったので、結婚している人は少なかった。今回は結婚している人の方が多くなっていた。


親友の小川おがわ紘一こういち君が出席していた。彼とは高校時代からの親友で大学も同じだった。僕は東京の食品会社へ就職を決めたが、彼は地元志向で地方公務員の試験を受けていた。首尾よく合格して今は立派な地方公務員になっている。


「やあ、久ぶりだなあ、元気そうじゃないか。嫁さんはもらったのか?」


「いや、まだ一人だ。小川君はどうなんだ」


「婚約したよ。6月末に式を挙げることになっている」


「それはよかった。もうお互いにそんな歳だからな。お相手は?」


「今年の1月にお見合をしたんだ。それで気に入ったと言うか気が合って交際して、少し前に婚約した」


「それで、結婚式には招待するから出てくれないか? それと友人の挨拶を頼めないか?」


「ああ、いいとも、休日なら大丈夫だ。日にちを早めに知らせてくれれば予定に入れておくから」


「招待状を出すところだったから丁度良かった。植田君なら頼んで安心だから」


「式を挙げるのか? それと披露宴もするのか?」


「ああ、役所の関係もあるし、親のこともあるから、しない訳にはいかないだろう」


「そうか。それで、どんな人?」


「可愛くてすごい美人だ」


「それで」


「東京の大学を出て、東京で就職していたそうだが、歳も歳だから帰ってきて結婚する気になったとか」


「幾つなんだ?」


「29歳になったばかりだ」


「東京で遊び疲れて帰ってきたんじゃないのか?」


「僕も最初はそう思った。でも会ってみると初々しくてとてもそんな風には見えなかった」


「それで」


「交際して3か月で婚約した」


「それで、彼女とはうまくやっているのか? 僕と違って昔から女の子には手が早かったからな。結婚しても浮気はしないだろうな」


「内緒だけど実はもう彼女を抱いた」


「ええ、手が早いな」


「どこで」


「彼女の部屋で」


「まあ、婚約しているからいいだろうけど」


「彼女は経験がないみたいだった」


「へー、悪い奴だな」


「もう完全に僕のものだ」


「年下の初心な娘を手籠めにした」


「人聞きの悪いことをいうなよ」


「それで今日もニコニコしていたのか。彼女を大切にしないとね」


「ああ、僕にはもったいないくらいに可愛くて美人だ」


「うらやましいな、ところで名前は?」


「新野直美というんだ」


「ええー」


「知っているのか? まさかお前の東京の元カノとかじゃないよな」


「ああ、心配するな。僕のお見合いの相手だったけど、断られた」


「そういえば、僕が3人目とか言っていたな」


「おそらく僕が一人目だと思う」


「植田君の方がカッコいいのになあ、どうして断られたんだ」


「よく分からない。可愛くてすごい美人だったから、僕は交際を希望したけどね。ご縁がなかったんだ。それだけだと思う。でも逃した魚はデカいなあ。本当に」


「悪いな、結婚式に出てもらって、それに挨拶まで頼んで、いやならいいよ」


「いや、親友の結婚式には出させてもらう。彼女とはご縁がなかっただけだから。お前と彼女とはご縁があったのだろう。結婚ってそういうものだと思う。彼女は僕のことを覚えているだろうから、伝えておいてくれないか。僕の親友だから君を幸せにしてくれる。安心していて良いと。それから僕がおめでとうと言っていたことも。まあ、僕が挨拶をするときにも言うけどね」


「分かった。伝えておく」


小川君は機嫌がよかった。それで二人は離れた。振り向くと小川君は、もう次の友人と話している。小川君は真面目で良いやつだ。だから僕の親友だった。間違いなく彼女を幸せにしてくれるだろう。


奈菜は頭のいい女性だ。どういうふうに男の前では振舞ったら良いのかよく分かっている。彼女が今までの経験を生かして、この人だと思って全力で攻略したら相手は間違いなく落ちるだろう。


現に小川君は彼女にメロメロだった。もし、僕が小川君の立場だったら僕も間違いなく落ちていただろう。あのホクロに気が付くまではそうだったから。


女性は奥が深い。僕は選ばれなかったということだ。好きになるよりも好きになられることの方が難しいのかもしれない。


◆◆◆

6月末の休日に行われた結婚式と披露宴に僕は帰省して出席した。ウエディング姿の奈菜はとても清楚で綺麗だった。小川君がうらやましかった。


その恨みつらみを友人の挨拶で話した。僕は新婦にお見合いで断られたことも話した。小川君がうらやましいとも話した。それを奈菜は嬉しそうに聞いていてくれた。


本当に彼女には幸せになってほしい。さようなら。言いようもない空しさを胸にしまって、僕は帰りの新幹線に乗り込んだ。

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