第51話 メルズーガラリー 2
「最下位?」×2
プロローグが終わり、張り出された今日のリザルトを見て、日伊 のオジさんコンビは、ホテルのプールでのんきにくつろいでいたみずきに詰めよった。
「そ、そんなに近づかないでよ!あ、それにリカルド、お酒くさい!」
ほらみろ!という手越の視線を外し、リカルドはさらにみずきに詰め寄る。
サルディーニャでも走れていたし、ナビゲーションもみずきは決して悪くない。
見たところ、怪我もしていないし、マシンもトラブルはなかった。
「あはは、あのね、ERTFって言うの?ウェイポイントがあれに表示されるんだけど、ぜんぜん通りかたがわかんなくて、止まってマップとディスプレイ見てたら、イリトラックがビービー鳴って、本部から携帯もなるのね。
"are you allright?"ってね。うっとうしいんで、それからほっといたら、ゴールでめちゃくちゃ怒られちゃった。」
あはは、と能天気に笑うみずきを見て、手越があきれて、みずきに言う。
「・・・探したってことは、ウェイポイントは通過したんだろうな?」
「あはは、いろいろめんどくさくなって、轍追っかけて、全開でゴールよ!気持ち良かったあ!」
能天気に話すみずきを見て、アタマを再度抱えるオジさん達。二人はみずきに背を向け、
「オイ、リカルド。お前んとこに3ヶ月もいたんだから、FIM規格のラリーのフォーマット。教えたんだろうなあ?!」
「お、教えたさ!」
砂丘を初めて越えた感動をマシンガントークで喋り続けるみずきを振り返り、長年、荒野でハンドルを押さえ込み続けた腕力で、みずきの華奢な肩を2人がかりで押さえ込み、黙らせる。
「な、なあによお!!」
2人の迫力に圧されたみずきは、負けじと声をあげる。
「いいか、ミズキ、これが、ダカールのセレクションの一環だってことはわかってるよな?」
とリカルド。
「わ、わかってるわよ!」
「今回は、とりあえず完走。じゃだめなんだ。それなりの成績で完走しないと、セレクションは通らない。」
と手越。
「ハ、ハイ!」
「いいか!これから、もう一度、機器の使い方と、ラリーの進め方をみっちり教えてやる!」
日本語で手越。
「え~、でも、さっきナンパされたホテルのバーテンさんが、ディナーご馳走してくれるって、誘われてるんだけどなあ~。」
「
イタリア語でリカルド。
「いいか、これから俺たちの部屋で講習だ!」
「ええ~、
最近は、英語での会話も普通にこなせるようになり、これ見よがしに日本語以外の言葉を使うみずきに、オジさん2人は怒りが頂点に達した。
「いいから来い!」
「Dai dai dai dai dai !」
「きゃあああ!助けてえ~い~やああ~。」
「なんだい、ありゃ。」
日本のテレビでよく見る美少女がいたので、あわよくば、一緒に写真でも撮らせてもらおう、とみずきをチラチラ見ていたある日本人参加者は、オジさん2人に連れ去られるみずきの姿を撮って、SNSにアップした。
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「・・・あいつめ、帰ってきたら、説教だな・・・。」
会社のPCで、今日の最下位のリザルトと、SNSを見ていたはるとは呟く。
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オジさん2人の奮闘のおかげで、みずきは出走58台中、29位でフィニッシュ。
ダカールのセレクションを十分通過できるリザルトで、メルズーガラリーを終えた。
完走メダルを首にかけて、リカルドと手越と肩を組んではしゃぐ画像がオフィシャルサイトに掲載されたが、オジさん2人の表情が、心なしか疲れきっていた原因は、今回のラリーエントラント一同知るところであった。
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