激闘!焼きイモン対プププ団
「プープププププ」
異様な静寂に包まれた渋谷の中心で、仮面の男の笑い声が響く。ヤツに迂闊には近寄れない。ヤツのオーナラはこの一帯を包むほど強大だ。しかし、ヤツを倒さない限り静寂は続くだろう。俺は拳を強く握る。
すると、ヤツが右腕を高々と挙げた。
「やりなさい」
ヤツと同じような仮面を被った男たちが俺に向かってきた。男たちは矢継ぎ早にパンチやキックを繰り出す。俺は必死にかわそうとするが、数が多い。いくつかのパンチやキックが俺の体に触れる。ただし、俺は全く痛みは感じない。俺はニヤリと口角を上げた。
男たちは違和感を感じたのか、俺から距離を置いた。
「サツマイモセルロースナノファイバー製のこのジャケットにそんな攻撃は効かないぜ」
俺は両腕を刀のように縦横無尽に振り回した。
酒盗(手刀) 黒霧(苦労斬り) !
腕から繰り出される衝撃波が男たちをなぎ倒す。男たちは力なく膝から崩れ落ちた。
「プープププププ。なかなかの腕ですね。ではこれはどうですか?」
ヤツが挙げていた腕を振り下ろす。
ウガー!
コスプレをした若者が奇声をあげて俺に襲いかかってきた。
「はたして数百人の軍勢を相手にできるかな?」
ヤツは走り去っていく。追いかけたいが、若者たちが行く手を阻む。俺は反対方向に逃げ出すしかなかった。全速力で逃げる俺。俺に向かう若者の数は雪だるま式に増えていく。
なんとかしなければ…… 俺は軽トラに戻ってきた。先ほどの初老の客がまだ焼きイモを頬張っている。
「おお、あんちゃん、お代忘れてるよ。って、なんだ、ありゃ⁈」
奇声をあげながらこちらに向かう異常なコスプレ集団に客は腰を抜かした。俺は急いでスピーカーの音量を最大にしてスイッチを入れた。
「いっしやーきいもー、おいも」
気の抜けた声が辺りを包む。若者たちが突如立ち止まった。若者の目に生気が戻る。辺りをキョロキョロと見渡した若者たちはすぐに街中に戻っていった。
よし、若者たちは正気に戻ったみたいだな。ただし、ヤツがいる限り同じ被害が他でも起きるはず。俺は目を閉じて、神経を尖らせる。
「そこだな!」
ヤツの居場所を掴んだ。強大なオーナラが逆にあだになったようだな。俺は再び街中に向かい走り出した。
「あんちゃん、イモのおかねー!」
初老の男は腰を下ろしたまま、力なく叫んだ。
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