メタンヒーロー 焼きイモン

ドゥギー

恐怖!静かなハロウィンパーティ

 10月31日、渋谷センター街は静寂に包まれていた。


 俺は軽トラを止め、スピーカーのスイッチを入れた。


「いっしやーきーいもー、おいも」


 荷台から煙と共に甘い匂いが漂う。白髪交じりの男性が近づいてきた。


「おいしそうな匂いだ。焼きイモを1つちょうだい」

「ありがとうございます」


 俺は荷台から長細い塊を取り出し、新聞紙に包んだ。


「どうぞ」

「ありがとう。あつつ」


 男性は塊を二つに割った。中から黄金色のイモが現れる。男性は豪快にイモをかじった。


「おー、うまいうまい」


 俺は軽くお辞儀する。


「ありがとうございます。ところで、今日はハロウィンですよね。今年は人が少ないんですかね?」


 男性は首を傾げた。


「いや、コスプレ連中は街にたくさんいるよ。でもみんなボーッと突っ立ってんだよね。特に若い連中が」


 不穏な空気を感じた俺は町の中心部に向かって走った。確かにコスプレをした若者は街中に溢れている。ただ、目に生気が感じられず、その場に立っていた。


「プープププププ」


 変な笑い声が聞こえる。渋谷109のあたりだ。俺は急いで109に向かった。


 109の入口には奇妙な仮面を被った男たちが踊っていた。周りの静けさが男たちの姿をより際立たせている。中心の男が高らかに笑った。


「プープププププ! 実験は成功だ。これで我がプププ団の日本支配の野望に一歩近づいたぞ」


 俺は109の前で足を止め、懐から焼きイモを取り出し、一口かじった。


「燃えろ、俺のオーナラ!奇跡を起こせ!」


 俺はプププ団に向かって突進し、豪快に右ストレートを放つ。


 いきなり団子(弾豪)!


 男たちは四方に散開した。しかし、誰もダメージを負っていない模様。俺の右拳は箱にめり込んでいた。


「き、貴様、何をするんだだだ」


 プププ団の男の声が震える。俺はニヤリと笑う。


「お前たちはこのスピーカーを使って、若者に変なことをしたんだな! モスキート音の催眠音波で!」


 説明しよう。モスキート音とは20代前半までの若者にはよく聞こえるが、それ以上の年代の人には聞こえにくい高周波音である。初老の男性は無事で若者だけ様子がおかしいのはモスキート音のせいのはずだ。その音源を断てば、街の様子は元に戻るだろう。


 プププ団の男の仮面の目が赤く光る。


「モスキート音に気づくとはな。貴様何者だ」


 俺は箱から拳を抜いた。


「俺は日本の平和を秘密裏に守る戦士、焼きイモン!」


 プププ団は静かにたたずんでいる。俺は辺りを見回した。若者たちはまだ立ちすくんだままだ。


「なぜだ、スピーカーは壊したのに……」

「モスキート音に気づいたのには驚いたぞ、ただ正解は半分だ」


 俺は中心の男から強烈なオーナラを感じた。





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