絵に描くように宣戦布告
「ふんっ!」
いつもよりもウェイトを増やしたトレーニングマシンをなんなく持ち上げてる原動力が怒りだってことはよくわかるけど。
「佐藤。昨日はごめんな」
「なに?なんか謝るようなことしたの、
「ごめん」
二度謝った僕に佐藤は、ビシッ、と指を差した。
「真中!これはわたしからの宣戦布告よ!」
「え?僕に?」
「ええと・・・真中と
「はい」
「その・・・えっと・・・す・・・」
「え」
「す・・・す・・・スーパーに」
「佐藤、なに言ってんの」
「だからっ!す、スーパーバイザー・・・」
「なんか、誤魔化す方向が錯綜してるぞ」
「好きだっ!真中がっ!」
「ごめん」
「はあ!?」
悪いとはわかってたけど、僕は三度目のごめんを言った。
「なにが・・・ごめん、なのよ?」
「昨日、幸田さんに告白した」
「・・・・・・・・・・」
「彼女も、同じ思いだった」
「はあっ・・・」
泣きそうだ。
かわいそうだしほんとうに申し訳ないと思ったけど、言わないわけにはいかない。言わないと佐藤をもっと傷つける。そう思った。
「真中。わたし、諦めないから」
「・・・佐藤。ごめん。多分気持ちは変わらないと思う」
「そ、それでもいいからっ!わ、わたしには直近二年間の濃〜密な真中との付き合いがあるわけだから」
「そうだな。ほんとうに感謝してる。佐藤じゃなかったら社会人としてやってこれてなかったと思う」
「でしょう!?わたしじゃなきゃ真中はダメなんだから!ぜーったいに負けないんだから!」
そう言って佐藤はランニングマシンのところに駆けて行って、超高速お願いしますっ!とインストラクターに頼んでた。
大丈夫か・・・
「うえー。足がっ・・・」
「あんな速いピッチじゃ当然だろう。ハムストリングスとか肉離れ大丈夫か?」
「なんか太ももの裏っかわがくすぐったい感じがする・・・」
「おい、それって多分まずいやつだよ。田代さーん!」
僕は慌てて馴染みのインストラクターを呼んだ。
見立てどおりやっぱり肉離れ一歩手前の感覚らしく、速攻で氷を出してきてアイシングしてくれた。
「冷たっ!」
「佐藤さん、我慢して。20分は冷やしてないと、ほんとに肉離れ起こしちゃいますよ」
「わたしなんかどうなってもいいのよっ!」
「どうしたんですか?真中さん?」
「多分、ランナーズ・ハイでしょう」
「黙れ、真中っ!」
とにかく冷やしたけど、しばらく安静にした方がいいと田代さんはアドバイスをくれた。
「ほら」
「うっ・・・かたじけない・・・」
僕は佐藤をおぶった。
実際、女子をおんぶするなんて僕自身生まれて初めてのことだ。
「真中、どう?」
「怪我した側がどう?ってどういうことだ?」
「だから・・・感じないかい?」
「何を」
「起伏を」
「起伏?」
「凹凸を」
「デコボコを?」
「誰がデコボコっっつたよ!オウトツをだよ!」
「ああ・・・ごめん、わからない」
「ごめんはもういいよ!あーあ」
「ため息つくと幸せが逃げていくぞ」
「幸せなんて、ドブに捨てろ!」
わかってるさ。
「あっ!UFO!」
「え」
チッ・・・
「えっ」
「勝った!」
キス、された。
口に。
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