第256話 帰宅の途……。(8)

『キッキ、キッキ。キッ、キッ』と。


「煩い~。煩い~。黙れ~。黙れ~。二人共~」と。


 覇王妃さまは、やはり、相変わらず真っ赤な顔──。お猿さんの如く奇声を出し、上げながら。胡亥姫さまと子嬰姫さま御二人。姉妹へと声を大にして叫びながら不満を吐くのだよ。


 それもさ? その場で恥じらいなく地団太を踏みながら。一人暴れる。


 そんな覇王妃さまのはしたない大暴れを籍は苦笑いを浮かべながら凝視──。


「羽~。はしたないから。もういい加減にしてやめろ~。いいか? わかったな?」と。


 己の妃さまの一人である覇王妃さまを諫める、だけでないのだ。


 籍自身の左右に、しな垂れ甘えるように寄りかかっていた秦学園のお姫さま御二人の方を、己の頭を交互に動かしながら。


「……胡亥と子嬰も。余り羽を煽るな。今回の作戦と勝利は、羽、拍、梁の三人の手柄……。演技力のお陰でスムーズにこちら側、秦が安易に、勝利ができたのだから。三人に感謝。労ってやらないといけないぞ。わかったな? 二人とも……」と。

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