第237話 秦を滅ぼした二人の女……(12)

 当の本人である籍、彼はというと? 自身の頬を、己の指先を使用しながらカリカリ──。カリカリとしながら素知らぬ振り、振りを決め込みながら。


「……ん? あっ、まあ、人間生きていれば、色々あるから。あるからな、健司」と。


 最後は作り笑い。苦笑を浮かべ漏らしながら籍は、何か? 何か大事なこと……。


 そう、健司少年が大変に大事なことを隠し。誤魔化すかのように余所見、素知らぬ振りを始めだすのだ。


 だから健司少年は、そんな友人、籍の様子、態度を見れば、彼はみな、全部、悟ることが可能だからね。


「うぅ、うううっ」と。


 嗚咽を漏らしながら涙を拭うのだよ。大変に可哀想な男の子……。


 そう、彼が興味を持ち、気に入る。気に入った女の子、女性はみな、彼の友人である籍のことを好きになる。愛してしまうといったことになるのだよ。


 だから籍との付き合い。友人関係が長い健司少年は以前から。昔から。こんな切ない想いをしながら青春時代を過ごしてきた、だけではない。今後も数年は、こんな切ない想いを抱きながら青春時代を過ごさないといけないのだと彼は思うと。己の友人だったと思う男に対して。


「く、くそぉおおおっ! 死ねぇえええっ! 籍~!」と。


 健司少年は、ついついと憎悪を募らせ吐いてしまうのだ。


 そう、いつものニコニコ──。異性、女性、少女達に何度も嘲笑い、蔑み、侮られようが、己の頭に手を乗せ。乗せながら。


「わっ、ははは~。ごめんよ。みんな~。俺はみんなを~。みんなのこと~。世の女性達。美少女と呼ばれる者達を~。ことを~。愛しているから~。許して~。ちょんまげ~」と。


 古のギャグまで、笑って言える。告げることが可能だった男が。とうとう己の友人だった男……。世の美少女達を我が物にして、独占──。情け容赦もなく毒牙にかける男へと悪態をついてきたのだ。間直には、胡亥姫さま……。


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