第226話 秦を滅ぼした二人の女……(11)

 でも彼が、健司少年が、『うらめしや~』と、思いながら。籍に対して憧れ、恨みに思い、はせながら見詰めようが。当の本人である籍の口からは。


「別に二人の生尻など見飽きているから。今更見てもどうってことはないから。俺自身の胸が時めくとか、動揺をすると言うこともない。健司……。羽は基本、家の中だと、ほとんど裸、裸体だしな……。それに胡亥は、事ある後に俺を呼びつけては、この下着、パンティーはどうか? と、問いかけてくるから。胡亥の尻も見飽きている」と。


 籍は健司少年へと素直に……。



 そう、己の腕を組み、『うん、うん』と頷きながら。包み隠さず告げるのだ


 健司少年が更に、『ああ、無情』となる。陥ることを平然と告げ、申すから。


「……うぅ、うう、籍……。お、お前、本当に知らないからな、家の学園の男子生徒、皆を敵に回すような事になっても俺は。俺は知らんからな、籍……。小麦色のマーメイド様は何処の女性(ひと)。学園の女性(ひと)かは、俺自身は解らん。知らんけれど。胡亥さんは、家の学園の男子の間でも上位の人気者。家の学園の四天王の御姫様の一人だぞ……。それなのに、それなのに」と。


 健司少年は、自身の目を潤ませ歯を。自身の奥歯を噛みしめながら。自身のマブダチ、級友である籍へと、呪いの詠唱、呪文を唱えるような、低い声音で不満と、だけではない。


「……学園内の男子達皆から不審と不満を買っても俺は知らないからなぁ」と。


 籍に忠告までするのだ。脅しのように、というよりも? もう頼むから胡亥姫さまの、いつもの、年齢には不釣り合いな、優艶下着着衣姿を見て確認、堪能をすることはしないでくれと嘆願をするのだが。


「俺に言ってもしらないし。文句があるなら胡亥に言え。俺は只単にアイツに呼ばれ。人気のないところへと腕を組み、甘えながら。アイツに連行されていくだけだから」と。


 とうとう籍は、秦学園のマドンナ姫さまのことを『アイツ』と、気安く名指しで呼び始めた。


 だから健司少年は、『はっ?』と、思い。泣くことはやめて、


「せ、籍、お前……。も、もしかして? 胡亥さんと深い仲。夫婦の関係、仲ではないだろうな?」と。


 彼は、自身の顔色を、更に青ざめながら恐る恐る、籍へと問いかける。問いかけてみるのだが。





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